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[掌編]終わりは、君にあげる

2013.03.19 Tue [Edit]

Coomfy Cat!
Coomfy Cat! / s13n1



ずっと彼が好きだった。
彼のことを、愛していた。
だから、いつも彼のそばに居て、彼の望むように振舞ってきた。

彼は、消して私を、みないのに。

愚かな恋情。都合のいい女、と、言われても仕方がない現状でも、それでも、私は、彼のそばにいられれば、それでよかった。
彼が、存在すれば、それでよかった。

なのに。



彼と知り合ったのは、高校の時だった。
その頃から、それなりに人気者だった彼と、クラスが同じだったことから、話すようになったのが最初だ。
そのうちに、私の友達と付き合うようになった彼は、しばらくするとその友だちと別れた。

ただのクラスメイト、だった、高校時代。

だけど、私はその頃から、ずっと、彼のことが好きだった。

視線が彼を追う。
偶然あうと、胸がときめく。
話をすると、顔が赤くなる。

それでも、そう、ただのクラスメイトだったのだ。その頃は、まだ。

大学は、少し離れたところに進んだ。

彼と同じ大学。学部は違ったけれど、ひっそりと狙って進んだことは、否定できない。
その大学に進んだのは、私と彼だけ。
一人暮らしを始めた私は、同じ高校出身ということもあって、前よりも彼と話すようになった。

時々、私の家に泊まって行ったり、食事をしていったり。
恋人ではなかったけれど、そういう関係になっていったのも、自然な雰囲気だった。

けれど、彼女ではなかった。

私は、彼に好きだと伝えなかった。
彼も、消して私を好きだ、とは、いわなかった。

たとえ、どんな時でも。

代返や、レポートの手伝い、頼まれたら食事も用意する。
とても便利に使われてるなぁ、と、思いながらも、頼まれることが嬉しくて私は、嬉々として彼に従った。

彼はやさしくは、なかった。
けれど、意地悪なわけでも、私を無視することも、なかった。

ただ、当然のように、私を便利な相手のように、使っていた。

そう。
彼に彼女がいる時も、ごく当たり前のように。

時々、そんな彼の彼女たちから、彼から離れなさいよ、と、迫られることもあった。

そんな時は、私は彼から極力距離をおいたけれど、彼がそれを気にしたようすもなく、離れれば離れたままだった。

そして、その相手と別れたら、また自然に私を使うのだ。本当に、よくわからない関係だった。

中には、私を便利な家政婦だと認識する女性もいて、あざけるように笑われたこともある。

それでも、そんなことはどうでもよかった。

だって、彼がいれば、彼がそこに存在していれば、私は幸せだったから。

どれだけ盲目なの、と、友達には呆れられ、心配されたけれど、それでも、私は十分だった。

彼が、そこに存在してくれていたら、それで、十分だった、のに。



「どうして」

真っ白い部屋。最近ではカーテンは淡い黄色だったりと、色のあるものが多いんだな、と、逃避するように頭の端で考えながらも、目の前の光景に、私の口からはぽつり、と、それだけがこぼれた。

どうして。
だって、元気だったよね。
数日前まで、普通に学校に通ってたよね。

普通に、元気だったじゃない。

彼が。
真っ白なベットの上で、少しだけ苦しそうに、小さく笑う。まるで唇を歪めるように。

「うん。余命宣告、されてた」

知らなかった。多分、他の人も、誰も知らない。大学の友人達は、誰一人として、そう、彼がいまこうして入院してることさえ、知らない。
何か事情があって休んでるんだ、と、みんな思ってる。私も、心配はしてたけれど、そう聞いていた。

彼が、いまここにいることを、知っているのは、彼の家族を除けばきっと、私、だけ。

「どうして」

他に言葉が出なくて、繰り返すように呟く。
かすれた声。呆然とした目からは、無意識に涙がこぼれた。

「うん。悪い。でも」

そこで言葉を切った彼は、私を、じっと見つめた。

そして、柔らかに、笑う。


「終わりは、君にあげるよ」


彼がいれば、それだけでよかった。
彼が存在するだけで、私は十分に、幸せだった。

たとえ便利に使われようと、たとえ恋人になれなくても、それでも、私は、彼がそこにいてくれるだけで、よかったのに。

私のものになってほしい、なんて、夢見ていなかったとはいわないけれど、それでも、彼がそこにいてくれさえすれば、私は、幸せだったのに。


こんなこと、望んでない。
私は、彼がいればいいの。いなくなるなんて、そんなの許せない。

なのに、終わりだから、彼は私のものになるという。

胸が詰まって苦しい。あえぐように、は、と、短く息を吐く。

どこか苦しげながらも、穏やかに微笑む彼に、はじめて憎しみを抱く。

やさしくない彼だったのに。私など、目に入っていない彼だったのに。

最後の最後に、こんな優しさをくれる、こんな残酷な優しさをくれる彼を、私は、はじめて強く憎んだ。


――止まらぬ涙をそのままに、けれど、私は静かに笑う。


それでも、私は。

彼のことを、愛しているのだから。



お題:「確かに恋だった」様 http://have-a.chew.jp/
選択式お題より 「終わりは、君にあげる」

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