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[掌編]さよなら。

2013.03.15 Fri [Edit]

Cat
Cat / giskou



小さい頃から、食べることが大好きだった。

いつでもモグモグと、口を動かしている子だったから、それ相応に体もぷっくりとした、まるまるとした子供時代を過ごしたものだ。

よくその小さなおくちに入るわねぇ、と、呆れたように笑う親は、それでも優しくて、体に良い物を、食べ過ぎないように、と、気を配ってくれた。

まるまるとした子供時代を過ごした割に、体を壊さなかったのは、その心遣いのおかげだろうと、今しみじみと思う。

まるまるとした子供時代から、少し過ぎ、やがて、少女時代と呼べる年頃になると、この「まるまるとした」体は、見事、からかいの種となった。

なんというか、今思えば、何処かに見本があるのそれ、といいたくなるような、からかい言葉の数々に、私は、傷つき、うつむき、涙を流した。

そして、痩せてやる、と、心に誓い、普通体型へと変化を遂げた。



その時には、食べることが好きな自分を、必死に封印し、どこか食べることにストイックな心意気にすらなっていた。

それが、結構なストレスだったのかもしれないけれど、その時の私は、気づかないふりをした。

程々に食べる、よりも、むしろ少ない量を食べることを意識した私は、それなりのプロポーションと、それなりに着飾るすべを得た。

ありがたいことにそれなりにさえ見えれば、それなりに相手が出来るものである。

恋人が出来れば、それなりに楽しく付き合い、しかし、やがて当たり前のように別れる。

触り心地が悪いだとか、よくわからない理由で別れるたびに、私は、こんなもんか、と、冷めた感覚で思うようになった。

痩せた相手がいい、といいながら、痩せていれば触り心地が悪いとは、笑わせるな、というやつである。

それでも、大学時代、社会人になってしばらく、と、私は相手を欠かすことはなかった。

なかった、けれど、どこかでいつも空虚で、いつも、別れるということの繰り返しだった。

それでも別に、悪くないけれど、なんだか虚しさが強くなって、次第に恋愛から興味が薄れていったのは、必然だったのかもしれない。

枯れた女、それでいいじゃないか。

そう思って過ごしていた。

だというのに。

目の前にはBMW。正直言って、この車を所有している人間を、私ははじめてみた。
車は国産の軽でいい、などと思うタイプの、自分の興味ある事柄以外はこだわらなさすぎる私にしてみれば、燃費が悪いんじゃないの? と、ファンには怒られそうな感想を抱く車である。

お金持ちが乗る車だよね、と、引きつる顔で眺めていれば、そこからおりたったのは、見知った顔。

幼馴染、というやつだろうか。

昔から近所に住んでいて、それこそ私がまるまるだったころの私を知っているヤツ、だったから、余計に顔が引きつる。

あの頃とは、私は体型も外見も、かなり変わっている。

あの頃のように笑われることはないんだ、と、気合を入れなおしたらば、奴は、なにを思ったか、私を見て、嬉しそうに笑うではないか。

そもそも、ここは、会社の前だ。なぜここに、今まで会うことのなかった幼馴染がいるのだろう。
それも、意味不明に高級車にのって。

混乱する頭のまま、立ち尽くしていれば、幼馴染はこちらへと歩み寄ってきた。

久しぶり、と、微笑む彼に、ええ、と、ひきつりながら答えるしかできない私。

どこか遠くで、きゃあ、なんて黄色い声が上がってるような気がする。そんなことどうでもいいのに。


痩せたね、なんて彼が笑う。

ええ、痩せたのよ、と、私は答える。

見返すために、変わったのだもの、痩せたのだもの、と、微笑む私に、彼は、目を細める。

前のほうが良かったのに。

彼がそう呟く。

その瞬間、私は彼に、平手を見舞っていた。

ばちん、と、強い音が響く。

唖然とした彼をその場において、私は身を翻した。

会社の前だとか。
彼がなぜ突然、この場に現れたのか、だとか。

そんな疑問も、何もかも、彼方へとすっ飛んでいってしまっていた。


食べることが好きだった。
美味しいものが好きだった。
だから、いつもまるまるとしていた。

でも、からかわれたから、痩せようと思った。
悲しくて、悲しくて、だから、痩せようと思ったのだ。

――初恋だった、と。

雑踏に紛れながら、私はひとつ、涙をこぼした。


-------8×-------- 8× -------- キリトリセン --------8×-------- 8×--
即興小説トレーニング:http://webken.info/live_writing/top.php
お題:子供の口 必須要素:BMW 制限時間:15分 文字数:1676字

結論:15分はハードだった。

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