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[掌編]銀の月と冒険者

2013.03.11 Mon [Edit]

Conjunction: Moon in Felis
Conjunction: Moon in Felis / Wilson Afonso



これでしまいか、と、苦しい息の下で苦く笑う。
体中にあった痛みも、もう既に麻痺してきた。
ひゅ、ひゅうと、喉から漏れる息も、喘鳴混じりで限界が近い。
口の中に広がる錆びた味が、余計にここで終わりだと、死を予感させる。

ああ、これでしまいなのか、と、どこかスッキリした頭でおもう。

どこかで、チリン、と、澄んだ鈴の音が、聞こえた。




――長いこと、冒険者として、やってきた。

村での仕事を侮り、こんな所で終わってたまるか、一旗揚げるぜと飛び出した10代の頃。
そのまま街で冒険者として登録し、夢を見て突っ走った。

身ぐるみ剥がされたこともある。
仲間に裏切られたことも。
死ぬ目にも何度もあった。

それでも、運が良かったのだろう。
何度も様々なことがあるたびに、次第に慎重になっていった。
慎重になれば稼ぎは減るが、その分危険も減った。

長く、できるだけ長く。

一旗揚げる、という目標はいつしか、長く生き延びることへと変化した。

30年と、少し。

気がつけば、派手ではないものの中堅の実力者として、ギルドでも名を知られるようになった。

二つ名つきの連中や高ランクの連中にはかなわない。けれど、中堅でベテラン。
あまりほめられた称号ではないが、それは、ある種生き延びてきたものとしての勲章だった。

俺は英雄じゃない。
俺は勇者でもない。

ただの、一介の、冒険者に過ぎないのだから。


平穏無事に、コツコツと依頼をこなしてきたけれど、いよいよ運は付きたらしい。

大したことのない、討伐依頼のはずだった。ランクとしてはC、俺ならば底まで負担なく、こなせるはずの依頼だった。

出るはずのないSランクの敵さえ、現れなければ。

なんの因果か、依頼主のミスなのか、CランクのモンスターではなくSランクとは。

それでも、生き延びるために戦った。逃げるための戦いだった。

それでも、力の差は歴然。

どれほど踏ん張っても、逃げようとしても隙はなく、気がつけばボロボロになって倒れ伏してしまっていた。

ああ、ここで終わるのか、と、諦めのような悟りのような心境で、目をとじる。

悪くない人生だったよな、と、おもう脳裏に、故郷の両親が浮かぶ。

親不孝か、いまさらだけれども、一度くらい村に戻ればよかった。

魔獣の唸り声と、襲い掛かってくるであろう気配。きっと食われてしまうだろう現状に、小さく唇を歪めた。


そのとき、どこかで、鈴の音が響く。

リリン、チリリン、と涼やかに場違いに響く鈴の音。
それにともなって、獣の唸り声がとまる。

しばしの静寂。

小さく詠唱する声と、魔獣が吹き飛ばされる気配に、断末魔の声。

一体何が起こってるのか、と、閉じていたまぶたを必死で開けば、そこには、小さな少女がいた。

こちらを覗きこむ、銀色の髪に紫の瞳。

「いきてるのね」

小さく呟く声に、低く笑おうとして咳き込む。

「ああ、いまの、とこ、ろ、な」

途切れ途切れの言葉に、少女、否、幼女は、ひとり、うん、と無表情で頷くと、何事かを詠唱し始めた。

小さな詠唱。鈴の音のような歌うようなそれは、今まで聞いたことのないもので。

何者だ、と、おもうまもなく、体が光りに包まれて、意識が途切れていく。

「――おま、え」

問いかけようとした言葉は、最後まで紡がれることなく。

「おやすみなさい」

その言葉とともに、ふつり、と、意識が途切れた。


「ほんとーに、すまんかった!」

がばり、と、俺に向かって頭を下げたのは、世話になっているこの街のギルドの、支部長だった。
ギルド付属の施療院に運ばれた俺は、10日ほど、眠っていたらしい。

さきごろやっと目覚めた俺に、駆けつけてきた支部長は、頭を下げた。
なにやら、調査ミスというか、上の方に対する権力争いだののあれこれで、ここしばらく、ランクが間違って表示されるという事例が続いたらしい。
幸い、俺の他には依頼に出発する前にその事実が発覚したらしいが、不幸にも俺は、その前に依頼に出てしまった。

生きててくれてよかったよ、と、しみじみという支部長に、ああ、と、うなづきながらも、俺の頭の中には、あの幼女のことしかなかった。

あれは、何者だ。

長く冒険者を続けているから、魔術師の知り合いも精霊術師の知り合いも、それなりにいる。
連中は知識を語ることを好む。そして、それを苦にせず聞く俺は、連中からすれば格好の相手で、あれこれと話しを聞いたこともある。

だが、あの呪文は知らない。すべてのことを知っていると、そこまでおごるつもりはないが、それでも気になるのは必然で。

何よりも、礼をいいたかった。あそこで死んだと思ったこの生命を、つなげることが出来たのは、間違いなくあの娘のおかげなのだから。

ここに俺を運んだのは誰だ? と、問いかけた俺に、支部長は、不思議そうに答えた。

ぼろぼろで、施療院の前に倒れていたんだ、と。


それから、しばらくして俺は施療院を出た。

他の連中に比べれば節制してためてあったとはいえ、さすがに財布の中身が乏しい。

すぐにでも仕事を始めないとな、と、思いながらも、心は幼女のほうに向く。

危ない趣味のようだ、と、思いながらも、そんなもんじゃねぇ、と、首をふる。

礼を、感謝を忘れたら、なんの意味もねぇ。

これからは依頼をこなしながら、あの娘を探すことにしよう、と、心に決めるのだった。


その後。

町から町へ依頼をこなしながら、俺はその娘を探すことになる。

銀色の月と、二つ名持ちとなる少女と、俺の、物語が、始まる。

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