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[掌編]紳士な彼と異世界の私

2013.03.07 Thu [Edit]

Lolita
Lolita / Marianoff



目覚めたら、全く知らない世界に、全く知らない姿で、存在していた。

これって、異世界トリップ? 転生トリップ?

呆然と空を見上げてたら、やってきたキラキラしいのになんか変な気配の男性に、さっさと帰るぞ、と、手をひかれて家に帰った。

家では、母と姉が、目をハートマークにしてお礼言ってた。
そんで、私の今の姿より年上の少女に、もんのすごい嫉妬の目で睨まれた。

なんでだ。

っていうか、一体、なにが起こってるんだ? と、首をかしげた。

それが、半年前の事だった。




半年でわかったこと。
異世界に転生したっぽいけど、この歳(現在10歳です)まで、記憶が戻ってなかったっぽい。
ついでに、銀に近い金色の髪に緑目という、ものすごい色彩で、ものすごいアングロ・サクソン系かよ、な、顔になってた。
私、あのあっさり醤油味な、日本人顔に戻りたい、と、真剣に思ったですよ。確かに、色合いと顔のつくりで、お人形みたいではあるんだけども、うん、毎日見たら飽きるよ。濃すぎる。
ちなみに、辺境貴族の娘らしい。父は、年のほとんどを王都で過ごし、私達家族は領地で過ごす。
ここで過ごしているのは、母と姉と私で、兄は王都の学校にいる。あとは、執事さんとかメイドさんとか。割と年配の方が多いです。面白いね。
私は、まだ10歳なので、それなりに最小限の見習い礼儀作法はあれども、普通に村の子とかと遊べるっぽい。
もちろん、あまりよろしくはないっぽいんだけど、黙認されてるって感じかな。
姉は、もう15歳で、デビュタントもそう遠くないから、割と礼儀作法とかあれこれ頑張ってるっぽい。
兄も、18歳らしいから、私だけなんかぽーんと年が離れてる。不思議ね。

母は、乙女な女性で、いつも楽しそうに過ごしてる。
時々どこか、別のロマンス星の生まれなんじゃないかとか、そんなふうに思うくらい。
よく子どもできたな、ってレベルなのは、すごいと思う。

閑話休題。

で。
この世界、異世界ってだけあって、魔法もそれなりにあるらしい。
誰でもつかえるのは基礎魔法。生活に役立つ魔法がメインで、あまり威力がない感じ。
ろうそくに火をつける、とか。洗濯物の水を切る、とか。便利よね。
んで、さらにそれらがすごい人たちが、魔法使いだったり、剣士だったり、極希に魔法剣士だったりと、そういう仕事をしていて、騎士だとか、領主のもとで働く兵士だとか、あと、魔物退治する人のギルドに登録してる人とかいるらしい。

ちなみに、この前私を迎えに来たのは、そのギルドの人。
いつもは、護衛の人がいるらしいんだけど、私がまだ5歳のみぎりに、そのギルドの男の人と知り合い、それ以来、この村を拠点に暮らしてるその男の人は、ちょくちょく我が家にやってくるらしい。

んで、問題はこっから。

この人、いわゆるハーレム体質? というか。
ニコポ・ナデポ標準装備っていうか。つまり、笑顔を見せれば相手が惚れる、頭を撫でれば相手が腰砕け、みたいな、意味不明な能力をもってるっぽい。
だって、お姉ちゃん、ばっりばり、あの人に惚れ込んでるもん。そのうちハーレムに参加してそうだもん。
妹の私に、めっちゃライバル心メラメラだもん。おねえちゃん、私未だ10歳だから、10歳だから!

て、いうかねー。
外見は、銀髪に赤目、で、割りとあっさりしょうゆ顔、な、その男。
なんというか……中二病真っ盛りでトリップしてきて外見替えました、って印象、ばりっばりなんです。

私、元の世界にいた時、アマチュアの小説読むの好きで。
いい年してたから、もうなんでもよんでたのね。雑食よ、雑食。そんで、男性向けのR18なハーレムものとかも、読むものないときには読んじゃってたりしたんだけども。

そのテンプレそのまま。

彼の周り、腰砕けな女性ばっかりいっぱい。ギルドの受付の人とかー、奴隷は禁止されてるけどそれに近い立場の人とかー、亜人さんとかー、もうね、彼を取り巻く周囲に綺麗な女の人が、顔がデッレデレで存在してるわけ。

うーわー、って思ったね。

でも、ほら、私まだ10歳だし。
大丈夫のはずよね、って、思ってた。

思ってたの。

――うん、大丈夫は、大丈夫だったんだ。だけどさ。

「Yes ロリータ、No タッチ! 少女は愛でるものだ!」

久しぶりに家に彼がやってきて、お姉さまがハイテンション、だったんだけど、私を呼んでといわれて不機嫌になって。
まぁ、お世話になってるしー、と、アリスルックみたいな、ワンピースにエプロンで(割りとデフォルトでこういう服装なんだもん、この世界の子供服)彼の前に出た瞬間。
彼は、一瞬悶えた。間違いなく悶えた。気づかれないようにすぐに戻したけど、表情でれってしてた!
で、口の中で彼がつぶやいたのが、上の言葉で。

ああ、うん。

大丈夫だけど、大丈夫じゃないっていうか。

そうかお前は、変態紳士(ロリコン)か、と、思わず覚めた目を向けてしまう。
Noタッチ、である以上、何かやばいことはないだろうけれど、愛でる対象ではある、と。

先ほど口走った言葉も、悶えた様子も隠して爽やかなお兄さん、といった風情の男に、お兄ちゃまごきげんよう、と、ご挨拶しながら思う。
それに爽やかに返事しながらも、気づいてみれば間違い無く悶えてる。笑顔の影で悶えてるのがわかる。

……ちょっと怖いな、と、思いつつ。内心では。

――やっべぇな、これ、周囲の女性から嫉妬バリバリ向けられる系? うわー、平穏がほしいわー。

とりあえず、恋愛対象ではない、ということを、しっかりと理解してもらえわねばならんな、と、心に誓いつつ、変態さんな彼をうまくあしらい、このまま傍観者的立ち位置でいられたらいいな、と、心から願う、私なのでした。


フラグなんてたってない。たってないんだからね!

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