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[掌編]週末ごとに異世界で侯爵令嬢として過ごしてます。

2013.02.26 Tue [Edit]

Princess Broni
Princess Broni / justgrimes



異世界トリップ。
これほど心ときめく言葉は、ないと思う。

訂正。
なかった、と、敢えて過去形にさせて貰いたい。

出来るなら週末トリップしたーいっ、それなら日常に影響でないしー、なんて、妄想を愛していた私。

やっぱり、二次元(もうそう)が三次元(げんじつ)になると、かなり違うものだ、と。

齢(よわい)16歳で、しみじみと天井を眺める、私なのだった。






「どうした。疲れたのか? そうか、それなら父がお前を抱っこしてあげよう」

「いや、結構です。ていうか、抱っこ言うな、父」

ばっさり、と、切り捨てれば、しょんぼりと項垂れる、私の父、らしき男。

父、なのだろうなぁとは、思うのですよ。なんとなーく、部分的に、私に似てるしね、うん。

っていうか、抱っこはないと思うんだ、16歳で、この世界では一応「成人」とされるらしき娘に向かって。

っていうか、ドレス苦しい。なにこれ、コルセットとか、ありえない。背骨まがるっつーの、と、内心ぶつくさ言いながら、手にもった扇で、口元を隠してため息をつく。

ちなみに、現在、綺麗なブルーのドレスを、着せられております。おとうさまのプレゼントだそうです。ちなみに、お父様はこの国の騎士団長で侯爵様なのだとか?

っていうか、私、ただの女子高生なんですけれど。ちょっと前まで、母と二人、ほそぼそと暮らしてた、ごくふっつーの、女子高生なんですけど!?

隣に立つ父、は、筋骨隆々……というのかしら、これ。でも、嫌な感じの筋肉じゃなく、ちゃんと実用的な筋肉なんだろうな、と思うような体格で。色合いは、私の髪よりも淡い、金に近い茶色で、眼の色はヘーゼル。……遺伝の法則では、二人を混ぜた色ってでないような気がするんだけどどうだっけ。理科苦手なんだよねぇ、と、ため息を付けば、隣で父は心配そうに、もうかえるか? なんて、いうわけで。

帰れるわけ無いでしょうが! 王宮主催の舞踏会から、即効で帰るとか、どんだけ不敬ですかっ。

日本にいれば、こんな、不敬とか身分とか、そんなこと考えなくてすんだのになぁ、なんて、遠い目をしながらも、うっすらと作り笑いで頑張る、16の夜なのでした。

ああ……知らなかった頃に戻りたい。


私の母は、週末トリッパーだったらしい。
もともと、母の家系は昔から、神かくしにあう人がおおかった、らしい。
その中で、何とかしようとあがいて、同じように神かくしにあうことの多い家系同士で情報交換して、そのうちに恋が芽生え……と、婚姻を繰り返した結果、超、神かくしにあいやすい家系が、出来上がったらしい。チョットまて、と、内心突っ込んだのは、しかたがないと思う!

で。
どんだけあいやすい家系同士で婚姻を繰り返したのか(ちなみに意外と、全国津々浦々に、あいやすい家系はあったらしい。マジで?!)、数代前から、異世界から帰還できる血族が増えてきて。
母さんの祖父母あたりから、なんでか、決められた時期に一定期間、異世界に行けば、勝手に飛ばされない、という法則がわかったのだとか。
ちなみに、飛ばされる期間は、10代後半から、20代が主に多く、そのうちじわじわと、飛ばされなくなるのだとか。

と、いうわけで、母の家系の娘さんたちは、怪しいな、と、思う15歳以降、だいたい高校入学あたりに、週末トリップの方法を学習するらしい。

そして、母も、年頃になってから、週末トリップを繰り返してきた、らしい。

らしいらしいが、多いのは、まだ私が、それらの情報を現実味を持って受けいられられないから。

だって、だってさ、こんな話、誰かにしても、絶対信じて貰えないし! 私だったら「妄想乙!」っていっちゃうよ、マジで。

で。

かーさんは、15歳から20歳の頃まで、ぼちぼちと異世界に飛んでいたそうな。
普段は高校や大学に通い、週末は異世界にトリップ。どんな生活だよ、ほんと。

んでもってー。
騎士団長である父に拾われーの、構われーの恋しーの、私が出来た、と。

結婚しようよ! とはなったらしいけれど、情勢が不穏すぎたため、とりあえず異世界からこっちに避難。

母は大学を休学して、私を産んで、大学に行きながら私を、実家の両親の協力の元、育てたんだそうな。

ちなみに、私が小さい頃に一度、父の元に飛んだとき以外、全く二人は合わずじまい。
ただ、私の写真と手紙を、母の力を使って異世界に届けていた、文通生活だったのだとか。

どんな純愛だよ。

騎士団長なる父上は、モンのすごく、私に会いたかったと。
で、反乱だー、せんそうだー、と荒れてたこの国を、王様だとか他の人達と協力して、なんとか平穏にして。

娘の私を、お披露目した、と。

侯爵家で開かれたお披露目パーティーは、そりゃもう、すごかった。

それ以来、私は、週末だけではあるけれど、こちらの世界で、「侯爵令嬢」なる、なにそれおいしいの? な存在として、生活してるのでした。


で。

こちらに週末ごとに飛ぶたびに、よくわかんないけどロッテンマイヤーさんみたいな先生から、ビシバシと最低限の礼儀作法とか身分制度とか、あとなんだ、ダンスとかを叩きこまれて。なんでこんな目にあうのよー!! と思ってたら、王宮からのご招待、っと。

私名指しできたから、ことわれないんだってー。

うはー、断りたい、超断りたい。
とは、思ったものの、王様も宰相様も、何やら母のことは知ってるっぽいし、お世話になったのよ~なんて母がほえほえ笑うから、仕方がないか、と、王宮の舞踏会なるものに参加、したはいいけれど。

……コルセット、きつい。侯爵家のパーティんときより、きつい。
あと、なんか、見世物のパンダになったみたい。うん、そうだね、母の存在がわからないままだから、卑しい庶子だね、どうでもいいけど聞こえてるよもう。

愛想笑いも引きつりそうだー、と、思いながら、過ごすことしばし。

帰るか? って、父よ、帰れるならば最初から来ないでもよかったんじゃないのーっ、帰れないでしょー、と思いつつ、笑ってごまかす。

だって、怖いって。男の人、身近にいなかったから。父だ、っていわれても、190cmのくまさんに近くに寄られたら、怖いんだって。

引きつり笑いの私に、少し寂しそうなのは気になるけれど、なれるまでは諦めてほしい。

とりあえず、扇で顔を隠し、うつむいてため息を漏らしていた私は、気づかなかった。

まっすぐに、私を見つめているらしい、熱い視線と。

先程までざわざわと、私のうわさ話をしていた人たちの、青く引きつったような顔に。

器用にも、私に気づかれないように冷気を発した父は、私と母の悪口をいう人にそれをぶつけていたようで。

また、熱い視線の主は、ただため息を漏らしながら私を見つめていて。

そう。
私は、勉強したとはいえ、まだまだ理解していなかった。

私の身分だと、王族レベルとでも婚姻が可能だ、とか。
侯爵家のご令嬢という立場が、どれだけ他の貴族にとって美味しい餌か、とか。

そんなこと、なーんにも、わからなかった。

週末だけのトリップ生活。

公爵令嬢として過ごすその時間が、どれだけ波瀾万丈になるのか、私はなーんにも、気づいていなかったので、ある。


ああ、もう。
可能ならば、もう、二度と、異世界トリップなんて、お断りしたい、切実に。
天井を眺めて、しみじみとそう思う、私なのだった。

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