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[掌編]偶然と必然の間で

2013.02.23 Sat [Edit]

Cat and Train.
Cat and Train. / Jay s Park



一度目は偶然、二度目は必然、三度目は、運命。

じゃあ、あなたと私の関係に名前をつけるならば、なんとつければいいのでしょうか。

がたごとと揺れる電車の中、ふ、と、視線を上げれば、こちらを見つめる視線にぶつかる。

これは、何度目?

あなたは、なにを思ってるの? と、そらさずに見つめれば、やがて、間に人が入って視線が途切れる。

学校へ行く日は、ほぼ毎日のように繰り返される、視線の交錯は、果たして、なぜなのだろう。

違う学校の制服の彼が、先に電車から降りる背中を見つめて、小さくため息をついた。




高校に入ってから、電車で通うことになった。
中学までは、普通に徒歩で通えてたけれど、さすがに高校となると、色々と違う。
大都会ではないから、そこまで満員にはならないけれど、それでも座れないし少々立ち位置を意識しないと厳しい程度には、電車は混む。

なれないながらも、一生懸命電車にのってせっせと通ううちに、少しずつ慣れてきた、一学期の終わり頃、次第に熱くなる空気に、うんざりしながらも、時々はたったまま本を読めるようになってきた時、その視線に気づいた。

最初は、偶然だと思った。

ふと顔をあげると、近くの私立高校の制服をきた、同じ年くらいの青年と視線があって。
けれど、すぐに彼が視線を逸らしたから、気のせいだと思ったのだ。

しかし、翌日も、また翌日も、視線が会うのだから、不思議に思い始めたけれど、彼はすぐに視線を逸らすから、私はきっと、自意識過剰なのだろうと、ちょっと恥ずかしく思いながら、意識しないように気をつけることにした。

それでも、視線がかち合う。

一日に1回は確実にかち合う視線に、次第にこちらのほうが気恥ずかしくて、先に視線をそらすようになったのは、いつだったか。

そのうち、夏休みが来て、課外授業の関係で通学時間が遅くなり、彼と合わなくなった7月末から8月は、どこか物足りないような気がしたものだった。

2学期、いつもの時間に通学が戻ると、また彼と視線がかち合うようになる。

なんだか、ホッとしたのは、なぜだったのか。

それでも、だから何かをどうにかしよう、とか、声をかけてみようかとか、そんなことはこれっぽっちも思わなかった。
恋愛なんて縁遠いもの、だと思っていたし、もしかするとまだ、彼がこちらを見てる、と思うのはただの私の自意識過剰なんじゃないかという気持ちが、根強く残っていたから。

ただ、視線がからみ合って。私か彼が、視線をそらす。

そんな状況が、かなり長く続いた。

そう、3年生になる、2学期まで。


その頃になると、なんとなく、視線を交わす時間が長くなってきていた。
最初に、こちらが逸らさ無くなったら、彼が視線をそらすようになった。
そのうち、彼も視線を逸らさず、お互いに見つめ合うような時間がすぎるようになった。

こうなってくると、ただの偶然、なんて、思えない。

なぜ、こちらをみているの? 期待してしまうよ、なんて、内心で思いながら、小さく笑う。

時々、それに釣られるように、彼が表情を緩めるから、余計に、胸が暖かくなってしまう。

決して近づかない。いつも私は、乗車口に近いところに立っていて。彼はその斜向かいになるような、反対側の乗車口の近くにたっている。
視線をかわすけれど、しばらくそのまま目を交わすけれど、近づかない。

近づいたら、何かが始まるかわりに終わってしまうような気がして、私は動けなかったし、彼は、全く動く気配をみせなかった。

理由なんてわからない、けれど。

ただ、視線を交わすだけの、朝のひとときがあるから、私は学校に通うのが楽しくさえ、あったのだ。


いつか、この距離が変わる時がくると、そうは思っていたけれど、いまは、もう少しだけは、と、思っていたのだ。


高校を卒業すれば、もしかするとこの電車には乗らなくなるかもしれない。

そうすると、彼と視線を交わすことも、なくなるだろう。

あと少しの間、この時間を大事にしたいと、そう、思っていたのだ。


恋なのか、どうなのか、自分にもわからないけれど、その一瞬があるから、私は毎日が、幸せでも会ったのかもしれない。


その、視線の交差が、偶然だったのか必然だったのか、私にもわからない。

もしかすると、運命だったのかもしれない、なんて、ちょっとオトメなことも思ってみたりした。


あと、数ヶ月。

いつか縮まるかもしれない、この距離を思って、私は、また今朝も絡む彼の視線に、そっと笑顔を向けた。


偶然と、必然の間で。

何かが始まる、そんな予感が、した。

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