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[掌編]君の声がききたくて。

2013.02.13 Wed [Edit]

Meowhello
Meowhello / KetaiBlogger



スカイプだとか、LINEだとか。
世の中便利なものが溢れてきたな、と、思う。

それでも、未だに僕は、電話をかける。

コールが、1回、2回、3回。

真っ暗なアパートの一室で、ネクタイを緩めながら冷蔵庫を空けつつ、つながるまでのしばしコール音に耳をすませる。

仕事から帰ってきたあとの、毎晩の儀式。

ぷし、と片手でビールの缶を開けながら、電話の向こうの彼女を思う。

君の声が聞きたくて。

つながった回線の向こうで、もしもし、と、告げるかすかな声に、そう告げたら、なんていうだろうか。

思わず緩む頬はそのままに、僕は、耳をすませるのだった。




彼女との付き合いは、長い。
というか、おそらく、長いといえるのだろうと思う。

中学時代のクラスメイトで、しかしその頃はほとんど面識しかなかったのだけれど、高校が同じところで、同じ中学出身ということから少しずつ話すようになった。偶然にも同じ系統の夢を持ち、大学も同じ、ということは、クラス選択も理系で同じ、理系は2クラスしか当時なかったので、2年、3年と同じクラスで、必然的に3年間同じクラスという偶然に恵まれた。

趣味も近かったように思う。

本を読むのをふたりとも好み、ジャンルは微妙に異なっていたものの、好きな文体や作風が似ていたためか、彼女の勧める本にハズレはなかった。そうなるとこちらもいいものを薦めたくなるもので、お互いに競い合うように本を読み、紹介し合い、学校の図書室に地域の図書館、繁華街の大きな書店にちょっとマニアックな品揃えの書店、と、あちこちに一緒に出かけた。

お前ら付き合ってんの? と問われて、お互いに顔を見合わせ、思わず同時に顔を逸らしたのは、懐かしい思い出だ。

その時すぐに付き合う、という自体にはならなかったものの、あまりしないうちに結局お付き合いとやらを始めたのだから、周囲から勝手にしろと言われるだけの事はある。

同じ志望校ということで、勉強も一緒にすることになって。年頃ゆえのあれこれもなかったとはいえないけれど、それよりも彼女とともに過ごし、彼女の声を聞くとどこかこの上ない居心地の良さを感じるという自分に、首をかしげながらも大学へ進んだ。

そのまま4年、そして就職。さすがに最後のゼミは別で、就職先も別にはなったものの、もう数年したら結婚しよう、と、お互いに確認し互いの両親にもご挨拶隅で順風満帆、といえるお付き合いをしている。

けれどまぁ、社会というのはそう生易しくないもので、見事に休日がスレ違い互いに残業が多い仕事についてしまったため、会うのもままならない毎日が、もうここ二年ほど続いている。

その中でもやりくりして会ったり、メールを送り合ったりとしているけれど、その中でも夜の電話は、自分の中でなくてはならないものになっている。
もちろん、ダメなときは互いに連絡するので、毎晩ではない。ない、が、付き合って云年という関係にしては、頻繁なほうじゃないだろうか。

何より、声が聞きたくて、どうしようもなくなるのだ。

どうした、というわけじゃない。けれど、彼女の声を聞きさえすれば、僕は、ホッとして、穏やかな気持ちで一日を終えられる。

就職して二年目。もうすぐ三年になる。それを超えたら、ちょっと落ち着くはずなので、結婚したいところだ、と、思いながら、今日もまた彼女へと電話をかける。

もしもし、と、どこかかすかな彼女の声を聞くと、一気に体中から疲れが抜けるような気がして。おつかれ、と返せば、おつかれ、とかえってくる、その声を聞いて、深く、深くため息をつく。ああ、彼女のことが好きだなぁと、そう思いながら。

と。

なんだか、君の声を聞くと、疲れが取れてほっとするんだよね。ありがとね。

彼女が、そんなことを、いうから。

それは僕のセリフだし、というか、僕が言おうとしたことだし、と、思わず息を飲む。

彼女も、同じように思っていてくれたのか、と、思うと、かっと顔に熱が集まって、彼女が目の前にいなくてよかった、と、心底思う。

僕も、と。
僕も、おんなじ、と、そっと囁くように告げると、彼女の声が嬉しそうに小さく笑うから、たまらなくなる。

言葉が続かなくて、黙りこむ。
電話の向こうからも、彼女の息遣いだけが聞こえる。

暗い夜の中、窓の外から差し込むネオンの光と、携帯のバックライトだけの中、唯一つながるのは電話の回線のみ。

その向こうにある彼女の気配を、その吐息を、ひとつも逃すまいと、そっと目を閉ざす。

そこに彼女がいる、ということが、何よりも嬉しくて愛しくて、僕はただ、耳を澄ます。


お互いに、何も喋らず、ただその間に流れる空気に浸ったまま、ただその時間を堪能する。

心地よさ。この居心地の良さを、味わうように。


だけど。

これだけじゃ足りない。
これだけで、足りるわけがない。

だから僕は、言葉を紡ぐ。

君の声が聞きたくて。
こうして毎晩のように電話することも、それもまた楽しいのだけれど。

もっとそれ以上を、やはり欲しいと思うから。


一緒にすもう、と、そっと紡ぐ。

やがて、うん、と、小さくはにかんだような言葉が聞こえた。


回線越しの声が、リアルな声に変わるまで、あと、少し。

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