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[掌編]異世界にとりっぷするなら

2013.01.30 Wed [Edit]

Cat in Barn Window
Cat in Barn Window / Just a Prairie Boy



異世界にトリップするなら、往復できる方がいい。
むしろ、週末にだけ、異世界探訪が出来るような感じがいい。
こっそりいってコッソリかえってくる。

そんなのがいいな、と、晩御飯を食べながら妄想炸裂させたら、うちのママったら、急に狼狽えたように挙動不審。

――ん? どゆこと?




我が家は母子家庭である。
いわゆる、シングルマザーというやつ。それも、結婚してない系。父親の存在を、私は知らない。
おばあちゃんとおじいちゃんちが、近くにあるけど、ままは同居を拒否してる。
家で、何やら在宅仕事、たしか翻訳系のお仕事をして、生計を立ててる。
おばあちゃんたちとママの関係は、悪くない。悪くないけど、微妙に壁がある。

なんとなーく、記憶の奥に残ってるのは、私が未だ小さいと思って油断したおばあちゃんが、ボソリといった言葉かな。

――どこの誰ともしれん男の子どもなんぞ、とおもったが……かわいいもんだね。

どこの誰ともしれない男の人の子どもなんだ、と、それからしばらくたって大きくなってから、その意味を理解した。

理解したけど、私はぐれなかった。っていうか、グレる余裕は、正直なかった。
いくらおばあちゃんちが近い、っていったって、母ひとり子供一人。ごはんに掃除に洗濯に、全部ママにさせるのは、厳しいものが合った。私の食い扶持も稼いでくれてるわけだし、そこはまあ、助け合い? みたいな? というわけで、私は小学校の頃から、ぼちぼちと家事をするようになった。

まぁ、最初はひどかったけど、中学卒業間近、高校も決まった(推薦ばんざい!)いまとなっては、それなりにそれなりの腕前になった。

で。
家での家事があったし、正直裕福ではなかった我が家だから、私はずっと中学の時から帰宅部で。
ママ仕事の関係で、パソコンもネットも、割りと早い段階から触ってた私の趣味は、オンライン読書。
図書館で本を借りて読むのもすきなんだけど、すぐに読み終わっちゃうから、もっぱらオンライン専門。

そして、オンラインといえば、異世界トリップ。あっちこっちに、召喚されたり迷い込んだり、転生したりと異世界へ行っちゃうお話は、たっくさんあって。
ママも割りと、年の割に雑食であれこれ読むから、時々アレがよかったこれがよかった、と話たりするんだけど。

今日もその話の流れで、何の気なしに、異世界トリップをするなら、って話したんだけど。

なんでママってば、そんなに挙動不審?


不思議に思って首をかしげつつ、じーっと見つめてみれば、おろおろわたわたとしていたママは、やがて、ふかぁぁくため息を付いて、私を見つめてきた。

なになに、なんなの?

「ねえ……異世界トリップ、してみたい?」

「……ママ、仕事のしすぎじゃない?」

がくり、と額を机に打ち付ける勢いでうなだれて、酷い! と叫ぶママには悪いけど、私、そんなに変なこといってないよね? ね?

二次元(もうそう)と三次元(げんじつ)を、ごっちゃにしちゃだめだよねー。
さすがに、まだ(ギリギリ)中学生な私でも、そのくらいはわかるよ!

ママつかれてるんだろうなぁーと、そんなふうに思いながらその日はもぐもぐと食事を終えたのでした。


……って、いうか、さぁ。

普通思わないよね。

ママがその、いわゆる週末トリッパーだった、なんて。

ついでに、私の父さんは、向こうの世界の人、だなんて。

ちっちゃい頃にあったことがあるのよー? とかニコニコ言われて、そういえば、めっちゃちっさい頃に、どっかに連れてかれて、なんか、変わった色味の目元の優しい男の人に抱っこしてもらったような……と、首をかしげてみたけれども。

あれですか。

中学校で「生意気!」とか意味不明の言いがかりを付けられた、髪の毛染めてるのか? ギリギリな色合いの、日に透けると完全に茶色にみえる髪だとか、ちょっと普通の人より明るめの茶色の目とか、もしかして、それは父ちゃん譲りなんですかっ。

妙に外に出かけると、動物になつかれやすいのも、父ちゃん譲りの体質だとか?

ええー。
ないない、そんな、二次元(もうそう)的設定、いらない。いらないってば。

私は普通に高校に入って、大学にいって、そんで、そこそこの会社に入るか公務員になって、穏やかな人と結婚してふっつーに生きていくんだから。

そんな、妙な設定、いらないーっ。


……いらないんだっていってるのに、ママったら聞いてやしない。

もうすぐ私は向こうでの成人なのだとか。えっと、16で成人なの? 若いよね。モラトリアム短いなんて、そんな世界お断り!

え、なに、成人のときに向こうで父さんと再会する? え? とーちゃん偉い人なの? 私が成人するまでに向こうで基盤を整えておくからって?

いや、いやいやいや、お断りします。お会いするのはやぶさかではないけれど、ほら、私庶民! ママ、私を庶民としてしか育ててないから! それに言葉、向こうの言葉がわからないしっ。

……って、ままん、翻訳って向こうの言葉からこっちの言葉の翻訳? それなら、小さい頃から見てたし、音声聞かされてたから、多少は……って、刷り込みなの? 刷り込み?!

え、もう断れない? 向こうは楽しみにしてるから、って……ああ、どうして私は4月生まれなの。5月のGW? もう決まってるんだ。あ、はははは……。


――かくして。

ただのシングルマザーと、その子どもだと思ってた我が家。

なぜか、ママが週末トリッパーで、しかもパパは異世界人とか。

えーと、私、どうすればいいの?

楽しみね、と、幸せそうに笑うママをみながら、途方にくれる私なのでした。


異世界トリップをするなら、週末だけがイイ。

けど。

二次元(もうそう)が三次元(げんじつ)になるのが、いいとはかぎらないとしった、16間際のお話でした。

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