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[掌編]1.悪夢の生まれる音

2012.06.02 Sat [Edit]
――ごめんな、俺、コイツのこと好きなんだ。

――お前はひとりでも、大丈夫だから。

――別れよう。


Sunrise
Sunrise / Diganta Talukdar




繰り返し繰り返し、同じ場面ばかりを夢に見る。忘れたいのに。忘れてしまいたいのに。

あの日、あの時から、私の中の時間は止まったままで、動き出す気配はない。

日が昇り、日が沈み、そして、季節がうつろおうとも、何も変わりなく。


私の中の時が動き出すのは、いつのことだろうか。



それでも、私は、幸せだったのかもしれない。
友がいた、ひとりじゃなかった。笑っていられた、日々を普通に過ごすことができた。
朝起きて仕事にいって、働いて帰宅して、眠る。繰り返しの毎日は、忙しければ忙しいほど、何も考えずにいられた。
彼との別れは確かに、私の中のどこかを凍りつかせるほどに辛かったけれど、それでも、日々の忙しさに紛れさせることはできた。

もう、恋なんてしたくない、なんて、思いながらも、未だに遠く彼のことを思う未練がましさに、小さく笑ってしまったりもした。


――ありきたりの失恋。ありきたりの別れ。

そのはずだった、たったそれだけだったことが、そうじゃなかったと知った時、全ては崩れ去った。

気付こうと思えば気づけたはずだった。けれど、その違和感も巧妙に誤魔化されていたのだと、全ては手のひらの上だったのだと、気づいた時にはすべて遅かった。



窓から朝日が差し込む。
大きな、キングサイズだろうか、な、ベッドの上、呆然としてしまう。

――やってしまった。

そんな思いが、心のなかをよぎる。朝日に照らされた室内は、とても豪奢でありながらも、品よくまとめられている。まるで高級ホテルのスイートルームみたいだ、と、現実逃避をするかのように考えながら、隣にある温もりから意識をそらす。
スイートルームになんて、泊まったことはない。そして、私は、ここがスイートルームなどではないことを知っている。

そして、ここが、私の生きた世界でないこと、も。

「――目が覚めましたか」

穏やかに声をかけられ、びくり、と、体が震える。背後からゆっくりと抱きしめられて、更に体がこわばる。現実だと認めたくない、現実などと思いたくない事実に、体の震えが止まらない。

「ああ、そんなに震えて――何も心配することなど、ないのですよ。ずっと、ずっと一緒に居ますから」


その言葉が。
愛しげに囁かれるその声が。

怖い、と。

心の底から思った。


覗きこむように見つめてきた彼の目は、青銀の色をしていて。さらりと流れた髪は、淡く輝く黄金の色をしていて。

ああ。

夢ではないのだ、と、逃れるように目をつぶった。

「――愛しい人。もう逃しはしません」


全ては彼の手の内だと、ただ、体を小さく縮こまることしか、できなかった。



彼と出会ったのは、いつだったか。
まだ、あの別れた恋人と、付き合っていた頃だったように思う。

提携先の外資系企業から派遣されてきたという彼は、青い目に金色の髪の、素朴な風情の青年だった。
すごい美形、というわけではないけれど、にこやかで朗らかな彼は、日本語も堪能で、周囲の評判もよかった。
どこか遠巻きにされがちな中で、彼の周りには人がいたように思う。世話係りというわけではないけれど、失礼のないようにと付けられた雑用係だった私とは、それなりに交流し、それなりに昼食などを共にする間柄だった。

彼はとても穏やかで、明るくて、楽しかった。
ジョークを上手く操り、私を笑わせ、共に笑えた。

友人、といっても過言ではないほど、さっぱりとした付き合いで、楽しく過ごしていたあの日々が、夢だったのではないか、と、思う。

こちらに踏み込みすぎることもなく、けれど、時々助言してくれる彼は、友人としては最上の存在だったのだから。


――恋人と別れたあと、落ち込む私を支えたのも、彼だった。

つけ込むようすもなく、ただ共に飲み、共に語り、共に歩いた。
もう恋など出来ないと、どこまでもふかく傷ついていた私を、そっと真綿でくるむように、彼は扱ってくれた。

それでも、恋にはならないと思っていた。

互いに友情だと、ただ、信じていた。

仕事で失敗が重なり出したのは、いつだったか。

変わらぬように仕事をしていたはずなのに、少しずつ少しずつ、ミスが重なっていった。

余りにも情けない現状に落ち込む私を、彼は静かになだめ励まし、周囲をかばってくれた。

恋人と別れた件も、なぜかひっそりと周囲に伝わり、相手が浮気したにも関わらず、私が悪いかのような噂が広まって、居心地悪く感じていたのもこの頃だ。それらの噂を耳にするたび、彼はおこって、私をかばった。

彼が言うなら、と、引き下がる人たちも、どこかで余計に私を悪く思うような空気の中、それでも私は、日々を繰り返す。朝が来て夜が来て、また朝が来て。季節が巡る中で、彼の存在が、私の中でどんどんと大きくなる。

それでも、恋してはいなかった。愛ではなかった。

――言うなれば、依存のような。

それに気づいた時、私はぞっとした。いつかは国に帰る彼に依存している自分に。依存せずには何もできなくなりそうな自分に。

恐れた私は、逃げることにした。まずは仕事をやめ、引越しをした。貯金を切り崩し、アルバイトをして、生計を立てた。

――何故、そこまで彼を恐れたのか。その時は全く分からなかったけれど、とにかく、彼に依存することがこの上なく恐ろしいことの様に思えて、私はひたすらに逃げた。

それも、すぐに、見つかってしまったのだけれど。

――彼は、笑っていた。

穏やかに柔らかに微笑む彼の目が、薄く銀色を帯びて見えた。それはこの上なく冷たいくせに熱くて、私は怯えて後ずさる。

――逃がしませんよ。

手を引かれ抱きしめられる。

そして囁かれたのは、彼からの執着、願い。そして――すべては彼が仕組んだのだという、真実。

恋人が他の女性と親しくなるように。恋人――10年近い付き合いの相手だった――とわかれるように。そして、職場で居心地が悪くなるように、すこしずつ、少しずつ、彼は私を追い詰め、そして、私のそばにいた。

逃げられないように、依存させるように、すこしずつ少しずつ、毒を盛るように私を絡めとった。

後少し、というところで逃げ出した私に、彼は、狂わんばかりの思いで、追いかけてきたらしい。

熱く熱く、そう語りながら告げる彼は、表情は穏やかでありながらその目にはギラギラとした狂気をたたえていて。


――つかまってしまったのだ、と、何かがぷつり、と、切れたような気がした。


違和感を感じてなかったわけじゃない。それでも、弱った私は優しさにすがりその違和感に目をつむった。


――もう逃がしません。


そう告げた彼が淡く光る。金色だった髪が淡く黄金に変わり、薄く銀を履いた青い目が、青銀へと変わる。

それは、変化。淡く光る彼は、楽しげに微笑むと、何事かを告げ、そして――私は世界から消えた。


何がどうなったのか、なんてわからない。

ただ、わかるのは、狂えるほどの情愛を私に注ぐ、ひとりの男がいるという事実だけ。

そして、世界を超えるほどの思いを、彼が抱えているという、事実だけ。

連れ去られた部屋で、愛を囁かれながら逃れることなど出来ぬままに、貪られ、気がつけば、朝で。


そして、抱きしめる男は、ひたすらに優しく愛を囁く。


ああ。

その言葉を素直に受け取り、溺れることができたら、どれだけ幸せなのだろう。

何も分からぬこの場所で、何故こうなったのかもわからぬ現状で、囁かれる愛はなぜか、私に恐怖しかもたらさない。


とくん、とくん、と、激しく脈打つ私の心臓と。
わずかに早く打ちながらも穏やかな彼の心音と。

重なって。


――まるで忍び寄る足音のようなそれに、私はただ、身を震わせるしか、出来なかった。


私の時は、恋人と別れたあの時からとまったまま。

繰り返した夢を見る事は、もう、ない。



お題:「確かに恋だった」様 http://have-a.chew.jp/
「ダーク系5題」より 「1.悪夢の生まれる音」

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