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[掌編]君の温もりを永遠に

2012.05.15 Tue [Edit]
締め切りが近い。
着々と迫ってくる時間に、胃がキリキリと痛む。
休んでる隙がない。眠っている隙がない。

ああ、なんで俺、こんな仕事選んだんだろう。

R0011874
R0011874 / kuzyoken



好きで着いた仕事のはずなのに、時折こんな思いが襲ってくるのは、ハードすぎる進行のせいだと思いたい。
今日は、それでもマシな方だ。すべての仕事が一段落したし、明日は一応休みをもらえた。
終電に間に合った。バンザイ、ありがとう。訳の分からないテンションで、ふらふらと家に戻る。
今日はゆっくり眠れる。布団で眠れる。それだけが頭をよぎる。

ふらふらと、アパートにたどり着き、ふらふらと上着をぬぐ。
狭いワンルームのアパートでよかったと、そんなことを思いながら、すぐそこにあるベッドへとバタリと倒れ込んだ。

後のことは、覚えてない。



目が覚めたら、日がすでに高いところにあった。

何時間ねたんだろうか。寝ぼけ眼のまま手探りでスマホを取ると、画面をみる。
眼鏡掛けてないから、あまり見えない。目を眇めていると、声がした。

「いま、13時だよ。おはよう」

どこか呆れたような、笑いを堪えるようなそんな声。
この部屋で俺以外の声がするとしたら、ひとりしかいない。

うー、と、唸りながらベッドから体を起こし、なんとか寝る前に外してサイドテーブルに非難させたらしい眼鏡をかける。

狭い部屋、窓際においたある意味じゃまなソファの上、本を片手にこちらをみる彼女の姿。

「あー、うん。おはよう。……久しぶり?」

そういえば、どのくらいあってないのやら。連絡はそれなりにしていたけれど、顔をみるのはかなり久しぶりな気がする。

「ええ、お久しぶり。まぁ、それってば、彼女にいうセリフじゃないわよね」

呆れたようにそうつげて、本をカバンへと戻すと、こちらへとやってくる彼女。

「うー、あー、ごめん。って、いつもこればっかだなぁ」

言い訳にしかならないそれに、思わず頭をかけば、彼女は拗ねたような表情でこちらを一度睨み、それから、ぽすん、と、ベッドに座った。

「いいけどね。わかってるから。わかってるけど。――でも、これはないんじゃない?」

へ? と、なんのことをいわれてるのか分からずに首をひねれば、ふう、と、深くため息をついて、彼女が自分のスマホをひらひらと振ってみせる。
なんだ? と、頭の上にクエスチョンマークを浮かべてみれば、深々とため息をついた彼女が、数度タップして、表示された画面をこちらにぐい、と、押し付けるようにみせてきた。

おおう、と、のけぞりながらみれば、そこには俺が送ったらしきメール。

『あいたい。あしたやすみ。いやして』

――これっぽっちも記憶にないのだが。

ちらり、と、彼女を伺えば、ふう、と、呆れたようなため息。

そのまま、再び立ち上がるとどこかへ向かう彼女に慌ててベッドから降りれば、彼女はソファの方を指さした。

「とりあえず、着替えて座ってなさい」

はい、と、素直に頷く以外に、何ができようか。


ぼーっとソファに座ってると、再びアクビが漏れる。かなり眠ったはずだが、まだ眠い。仕方がない、ほとんど寝ずに仕事をしてたんだからなぁと、思ってると、いい香りが漂ってくる。
なんだなんだ、と、キッチンをみれば、お盆に何か器を載せてこちらに来る彼女の姿。

「とりあえず、食べて。胃に優しいものがいいだろうから、うどんにしといた」

「天ぷらうどん?」

「ばか。とりあえず素うどんよ」

とん、と、置かれた器からは、ふわりと出汁の香り。そういえば温かいもの食べるのも久しぶりな気がして、両手をあわせいただきます!
!と告げるやいなや、一気に食べ始める。

「誰も取らないから、ゆっくり食べなさいよ」

呆れたような彼女の声は、どこか、暖かくて、優しかった。

食べおえて、深くため息をつく。幸せだ。お腹いっぱいだ。最高だ。うどんだけか、なんて思った俺を許してほしい。
温かいものを食べた体は、じわりと温もって、疲れを癒してくれる。

ふわ、と、アクビを漏らしてると、洗い物をさっさと終えたらしき彼女が、こちらにもどってきて、すとん、と、隣に腰を下ろす。

「ありがとな」

アクビを噛み殺しながら、お礼を告げれば、ふん、と、鼻を鳴らして。

ぽんぽん、と、自分の膝を彼女が叩く。

「え?」

答えはなく、ただ、ぽんぽんと、無言で、そのスカートに包まれた太ももを叩く彼女。

それでも首をかしげてると、もう! と一言つぶやいて、ぐいっと引き寄せられた。

「う、わ!」

疲労の抜け切らない体は、彼女のなすがまま。なにを、と思うまもなく、頬に柔らかで暖かな感触。

膝枕の状態となっていることに驚いて、そのまま彼女を見あげれば、少しだけ目元を染めた彼女が、そっぽを向きながら呟いた。

「癒して欲しいんでしょ? 可愛い彼女のひざまくらで、いやしてあげるわよ!」

照れ隠しのようにそう言い切った彼女に、目尻がさがる。なんだよ、カワイイ真似しやがって。

その間にも、ふわり、ふわりとアクビは溢れる。

「もう、いいから、少し寝なよ。ね」

心配そうな声とともに、彼女の手が頭を撫でる。
その優しい感触に、意識がすこしずつ、すこしずつ、眠りに誘われていく。

ああでも、いわなければ。
彼女につたえなければ。

もう少し、この仕事が終わったことで、後少しで。

「もう、すこしで、おちつくから――」

そうしたら、きっと。

結婚しよう、という言葉は、口にできたのかどうか。

一瞬彼女の手が止まって、薄く開けた目にうつるのは、驚いたような彼女の表情と、そして、幸せそうな笑顔。

「――ばかね」

優しいその声を最後に、俺は、幸せな暖かさを感じながら、眠りに落ちたのだった。



のちのち、さんざん妻からからかわれることになる、俺のプロポーズの日の、出来事だった。



お題:「確かに恋だった」様 http://have-a.chew.jp/
「それは甘い20題」より 「10.ひざまくら」

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