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[掌編]過去と今の現実(リアル)

2012.05.07 Mon [Edit]
私には、宝物がある。
お気に入りの宝物入れの中に、ひっそりと、普段それはしまってある。

Wooden box
Wooden box / bennylin0724


高校時代の、修学旅行の時の写真。
そこには、真ん中に、賑やかに笑う少年たちが数名。
そして、少し離れた所に、偶然写ったであろう、友人と会話する女の子たちが数名。

それぞれが制服姿で、とても楽しそうに、写真に写っている。


少年の中のひとりは、私の大好きな人で。
女の子たちの中のひとりが、私で。

制服姿の、すでにもう何年も前の写真なのに、私は、これを手放すことが出来ない。

写真の中で、私と彼の距離は、3センチ。

現実には、明るく活動的な彼と、どちらかと言えばひっそりと本を読んでいるような私では、接点がほとんどなく、彼の周りにはいつも人が集まっていたから、近寄ることもできず、なんとなく、遠くからみているだけの、存在だった。

でも、この、写真の上だけでは、とても近くに、いる。

幼い恋心は、時々彼を見かけるだけで、この上なく幸せな気分に私をしてくれたものだった。

そんな、懐かしい感傷とともに、その写真は、私の宝物入れの中にひっそりと眠っていた。



結婚式まで、後少しとなった今日。

式前には引越しを済ませようということで、新居へと移動が始まっていた。
すでに入籍は済ませてあるから、私はもう、人の妻である。苗字が変わり今日引っ越すというのに、未だ私は、何かが変わったという実感が湧いていなかった。結婚式を済ませたら気持ちもかわるのかな、なんて、そんな風に思いながら、それでも、この人と思い婚姻を結んだ相手と暮らすのだから、幸せな気持ちで、準備をしていた。

すでに夫の方は、荷物を運び終えていて、今日は私の荷物移動をすることになっている。
整理は、休日や仕事の合間に少しずつ済ませたので、もうほとんど終わっていて、あとは運び出すだけになっていた。
引越し屋さんを頼もうかという話もあったけれど、夫はともかく私は実家からの移動であり、家具や家電品は購入したり一人暮らしだった夫のものを使うことになったしで、私の部屋から持ってくのは洋服類や生活用品だけ。それも、両親がこの部屋は残しておくから少しずつ運びなさい、と、どこか感傷を持って告げられてしまえば、一気に運びだすのも忍びなくて、結局、今日は彼と二人、荷物を運び出すこととなった。

荷物の最後の確認をしていて、ふと、宝物を入れた箱を思い出す。開けば、チープな雑貨がいくつかと、数枚の写真。雑貨類やアクセサリーはけして高価なものじゃないけれど、どれも、私の宝物だったものたち。そして、写真は――。

玄関の方で声がする。父の大きな声、それに笑いながら挨拶を返す彼の声。そして、母の少しよそ行きの声。

急いで箱の蓋をしめて、机の上に置くと、部屋を出る。

階段のところまでいくと、リビングに案内しようとする両親に、作業があるからと断っている夫の姿。

「いらっしゃい」

階段の上から声をかければ、振り返り夫が破顔する。この人とこれから暮らすのだと、なんだか気恥ずかしいようなうれしいような複雑な思いでいれば、母が私を叱り始める。何故玄関まで迎えにでてないの、ちゃんとしなさい、そんなのでやっていけるのほんとにもう。と、繰り言の様に繰り返される言葉も、今日を境に聞く回数が減るのかと思うと、なんだか愛しい。
ごめんなさい、と、小さく笑って階段を降りようとすれば、いや先に荷物を降ろそうよ、と、夫が言う。
両親に断って、階段を上がってくる夫を先導して部屋へと向かう。

私の部屋は、2Fの6畳。一人娘だからか、そこそこ広い部屋を与えてもらった。
可愛らしい女の子の部屋、ってわけじゃない。どちらかといえば、シンプルな私の部屋。いくつかのぬいぐるみとか、かけられたカーテンとか、机の上の小物とか、まとめてみれば確かに女の子の部屋という雰囲気で、逆に言えば大人の女性とは程遠い。ベッドはそのまま置いていくけれど、まとめた洋服や他の荷物でベッドと床はうまっているから、雰囲気なんて感じられないと思うのだけれど。

部屋に入った夫は、一瞬立ち止まり、目を細めてぐるりと部屋を眺めた。まるでそれは、そこの雰囲気を感じ取ろうとしているかのようで、どうにも気恥ずかしくて、急かすように荷物を移動させ始める。

そんな私に気づいたのか、くすくすと笑いながら、彼が荷物を手に取り、そして、机の上を、みた。

そこには、閉めたはずなのに、開いたままの、宝物の、箱。

そして、その一番上には、あの、修学旅行の、写真。

気づいた時には、おそかった。

「や、まって、ダメ!」

とめる声もなんのその、彼は手を伸ばすと、写真を取り上げた。そして、驚いたように目を見張り、それから、私と写真を見比べる。

――ああ、見つかってしまった。

彼に、見られてしまうなんて。あの時、確かに蓋をしめてから、机においたはずなのに。
思わず俯けば、彼がこちらに歩いてくるのがわかる。ああ、どうしよう。別に悪いことをしていたわけじゃない、ないけれど――。

「これ。高校の時の?」

声も出せず、うなづく。

「修学旅行んとき、だよね。――気づかなかった」

こんなに近くにいたなんて、と。

顔を上げると、間近に夫の顔が、あって。驚いて身をひきかけたら、そのまま抱きすくめられた。

「俺、さ。高校ん時から、好きだったんだ。けど、いつも静かにしてたから、俺ら近寄ったら邪魔だろうとか、いろいろ、考えててそのままで、さ。だから、再会してからクラスメイトだったよねって、気合入れて近づいて。――今更、だけど、なんていったらわかんないんだけど、すんげぇ、嬉しいんだけど」

その彼の顔が、本当に嬉しそうだったから。

「私、も。高校のときから、ずっと、みてた。再会して、素知らぬふりして、同級生だったんだねって、誘ってもらうたびに嬉しくて――貴方が私の夫になって。その写真見るたびに、不思議で嬉しくて幸せで、どうしようもない気分に、なるの」

声にならないうめき声とともに、彼に強く抱きしめられる。

「あーもー、もったいねぇ。高校の時にちゃんとアプローチしてればっ。くそー、めっちゃ悔しいんだけど」

思わず、笑ってしまう。

「もう。これから、嫌ってほど一緒にいるんだから、いいじゃない。ね、旦那様?」

冗談めかして告げれば、彼も楽しそうに笑って。

「ああ、これからずっと一緒だ。奥さん」



あの頃、私と彼の距離は、とても遠くて、写真の中の3センチが愛しかった。

いま、私と彼との距離は、3センチ。

そして、今、0になる。



お題:「確かに恋だった」様 http://have-a.chew.jp/
「それは甘い20題」より 「02.3センチ」

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