[物語]04. 「そっちばっかりずるい!…頭なでさせて」
2012.01.21 Sat [Edit]
ありがとう、といって撫でられた。
助かったよ、っていって、撫でられた。
――なんだかなぁ、って、思う。
頭を撫でられるのって、よくあることで。買い物した先のお店の人とか、無意識に撫でちゃうらしくって、そういうの、よくあることで。しょうがないなぁ、って、諦めてたんだけど。
やっぱり、店長に撫でられるのは、なんだか、嬉しくて恥ずかしくて、悔しい。
――こどもじゃないんだよ、って。
いったら、彼は、どうするだろう?
お客さんに運ぶお冷を用意しながら、ちょっとため息をついてみた。
あーあ。
店長さんが好きか、といわれると、たぶん、って答える。
はっきり好き、って言えるほど、まだ時間はたってないきがするから、だから、たぶん。
でも、どきどきするし、嬉しいし、はずかしいし。
悔しい気持ちも、もっとちゃんと私を見て欲しい、って気持ちなんだろうな、って、思う。
だけど。
撫でてもらえなくなるのも、なんとなく嫌な気がして。
じゃあ、どうすればいいのさー、と、むう、とまゆを寄せた。
手の中で、品出ししてたぬいぐるみがきょとんと見返してくるから、あっかんべーしてみた。
……店長がちょうど、それみてわらってて。
ああ、こんなだから、余計こどもあつかいされちゃうんだよなぁと、がっくりうなだれた。
「ありがとうございます。今日もお疲れ様でした」
そういって店長が微笑んで。そっと頭を撫でてくれた。
気持ちよくて、きゅっと目が細まる。撫でてもらえるとき、私は猫になったような気分になる。膝の上で、ごろごろ甘えさせて欲しいような、そんな気持ち。――だけど、それは子供扱いされてるから、って思うと、胸がちょっと、きゅっと切なくなる。
ああ、悔しいな。
なんだか、哀しいな。
いろんな思いがぐるぐるして、思わずうつむいたら、心配そうな店長さんの声。
「どうかしましたか。――具合でも?」
ぶんぶんぶん、と強く頭をふって。
それから、えいって、顔をあげたら、睨むようにみつめて。
「店長ばっかり、ずるいですっ。――私も頭、なでたいですっ」
「……っ、えっ?」
うろたえたように言葉をつまらせる店長。嫌なのかな? と思ってたら、口元を片手で覆って。うう、と、唸ってる。
「……だめ、ですか?」
「あ、いや、そんなことは」
ぶんぶんと手を振る店長。それから、しばらく視線を彷徨わせたあと、屈んでくれた。膝立ち。そして、顔が近くなる。
「え、ええと、これでいいですか?」
視線を落として、目を合わせないで。だけど手が届く位置にしゃがんでくれた、店長。近くなった顔。よく見ると、顔が真っ赤。耳も真っ赤。
つられるように、私の顔も赤くなる。顔をあげないで。しばらくでいいから。
そっと手を伸ばして、撫でる。店長は髪を固めてないから、さらさら。だけど、硬い感じ。男の人の髪の毛ってこんななの? 不思議に思いながら数度なでてると、うう、と、店長が困ったように唸ってる。
なんだか、少しおかしくなって。
「店長、顔、まっか」
そっと、意地悪に告げたら、ぐっ、っと、詰まったように唸って。
「っ、きゃっ」
ぎゅ、と、抱きしめられたと思ったら、そのまま持ちあげられた。
「う、きゃぁぁぁ、な、なにするんですかぁぁ」
「……なにもしませんっ。けど、意地悪いこと言う人には、お仕置きです」
どきん、って胸がなる。見下ろす位置にある顔を見れば、しばし視線を彷徨わせたあと、店長がこちらをみあげて。
新鮮な位置。
ふわり、と、店長が笑うから。
釣られるように、微笑んだ。
好きです、と、告げられる前のお話。
――店長というおっきな彼氏が、出来るすこしまえの、お話。
------8×-------- 8× -------- キリトリセン --------8×-------- 8×--
恋したくなるお題 様より
http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/
助かったよ、っていって、撫でられた。
――なんだかなぁ、って、思う。
頭を撫でられるのって、よくあることで。買い物した先のお店の人とか、無意識に撫でちゃうらしくって、そういうの、よくあることで。しょうがないなぁ、って、諦めてたんだけど。
やっぱり、店長に撫でられるのは、なんだか、嬉しくて恥ずかしくて、悔しい。
――こどもじゃないんだよ、って。
いったら、彼は、どうするだろう?
お客さんに運ぶお冷を用意しながら、ちょっとため息をついてみた。
あーあ。
店長さんが好きか、といわれると、たぶん、って答える。
はっきり好き、って言えるほど、まだ時間はたってないきがするから、だから、たぶん。
でも、どきどきするし、嬉しいし、はずかしいし。
悔しい気持ちも、もっとちゃんと私を見て欲しい、って気持ちなんだろうな、って、思う。
だけど。
撫でてもらえなくなるのも、なんとなく嫌な気がして。
じゃあ、どうすればいいのさー、と、むう、とまゆを寄せた。
手の中で、品出ししてたぬいぐるみがきょとんと見返してくるから、あっかんべーしてみた。
……店長がちょうど、それみてわらってて。
ああ、こんなだから、余計こどもあつかいされちゃうんだよなぁと、がっくりうなだれた。
「ありがとうございます。今日もお疲れ様でした」
そういって店長が微笑んで。そっと頭を撫でてくれた。
気持ちよくて、きゅっと目が細まる。撫でてもらえるとき、私は猫になったような気分になる。膝の上で、ごろごろ甘えさせて欲しいような、そんな気持ち。――だけど、それは子供扱いされてるから、って思うと、胸がちょっと、きゅっと切なくなる。
ああ、悔しいな。
なんだか、哀しいな。
いろんな思いがぐるぐるして、思わずうつむいたら、心配そうな店長さんの声。
「どうかしましたか。――具合でも?」
ぶんぶんぶん、と強く頭をふって。
それから、えいって、顔をあげたら、睨むようにみつめて。
「店長ばっかり、ずるいですっ。――私も頭、なでたいですっ」
「……っ、えっ?」
うろたえたように言葉をつまらせる店長。嫌なのかな? と思ってたら、口元を片手で覆って。うう、と、唸ってる。
「……だめ、ですか?」
「あ、いや、そんなことは」
ぶんぶんと手を振る店長。それから、しばらく視線を彷徨わせたあと、屈んでくれた。膝立ち。そして、顔が近くなる。
「え、ええと、これでいいですか?」
視線を落として、目を合わせないで。だけど手が届く位置にしゃがんでくれた、店長。近くなった顔。よく見ると、顔が真っ赤。耳も真っ赤。
つられるように、私の顔も赤くなる。顔をあげないで。しばらくでいいから。
そっと手を伸ばして、撫でる。店長は髪を固めてないから、さらさら。だけど、硬い感じ。男の人の髪の毛ってこんななの? 不思議に思いながら数度なでてると、うう、と、店長が困ったように唸ってる。
なんだか、少しおかしくなって。
「店長、顔、まっか」
そっと、意地悪に告げたら、ぐっ、っと、詰まったように唸って。
「っ、きゃっ」
ぎゅ、と、抱きしめられたと思ったら、そのまま持ちあげられた。
「う、きゃぁぁぁ、な、なにするんですかぁぁ」
「……なにもしませんっ。けど、意地悪いこと言う人には、お仕置きです」
どきん、って胸がなる。見下ろす位置にある顔を見れば、しばし視線を彷徨わせたあと、店長がこちらをみあげて。
新鮮な位置。
ふわり、と、店長が笑うから。
釣られるように、微笑んだ。
好きです、と、告げられる前のお話。
――店長というおっきな彼氏が、出来るすこしまえの、お話。
------8×-------- 8× -------- キリトリセン --------8×-------- 8×--
恋したくなるお題 様より
http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/
スポンサードリンク