[物語]03. 大きな荷物が歩いて来たら
2012.01.20 Fri [Edit]
そんなこんなで慣れてきたバイト。
店長と二人だけの、朝から夕方までの時間。
――時々、店長の手がわきわきしてるの、気のせいでしょうか?
お仕事は、基本朝から始まる。
店の掃除をして、カフェの客席の掃除。それが終わったら、入荷した品物の品出し。
メニューはドリンク中心で、ケーキが少々。
雑貨屋さんで買ったものを、カフェで眺めながらくつろぐような、そんな場所。
商品の品出ししてる間に、店長が仕込みの仕上げしてて。
商品の受取は、だいたい店長がしてくれるんだけど、そうじゃない時も、あるわけで。
「どうも、ありがとうございまーす」
「どうもー」
荷物をみて、首を傾げる。普段の入荷分とは違う、追加入荷っぽい品物。結構大きな箱で、なんだろなこれ、と、思いながら、もてるかなー、と、持ち上げてみた。
「……みえないし」
そこまで重くなかったから、なんだろうなこれ、と、思いつつ、持ち上げたんだけど。前が見えない。超見えない。
どうしたもんかな、と、思うけど、ここからならば見えなくてもぎりぎりイケルかな、と、ちらちら横から覗きながら運んでいたらば。
「あああっ、だいじょうぶですか?」
ひょい、と顔をのぞかせたらしき店長さんが、慌てて飛び出してきて。箱をひょい、と持ち上げるから。
「うひゃっ。あ、はい、えと平気です」
……思わず箱ごと持ち上がるかと思ったじゃないか! いや、それは多分ありえないけどっ。
見あげれば、なんだかこう……緩んだ表情の店長。さくさくと箱を運んで、それからこちらにぐるっと戻ってきた。
目がランランと輝いてる。な、なに?
思わず後ずされば、両手を差し出された。
あ、やなよかん。この位置って……。
「っ、ぎゃー!」
すっと差し出された両手が脇の間に差し込まれて、ひょい、と持ち上げられた。
いわゆる子どもを抱き上げる感じ。なにこれ、なにこれ、なにすんの!
ふしゃー、と威嚇するみたいに睨んだら、嬉しそうに笑われた。
「すみません、あんまりかわいくて我慢できませんでした」
……すっごいセリフなんだけど、この体制ではうれしくないですから!
むっすりと膨れた私に、今日のセットメニューのケーキを賄賂として差し出しながら、店長は困ったように笑う。
曰く、荷物が歩いてきてるようで可愛かった、と。
曰く、ここしばらく、ずっとこう抱きあげたくってどうしようもなくてうずうずしてた、と。
ごめんね、と、まゆをへにょりとさせていわれれば、よくないけど、いいですよって言ってしまう。
――惚れた弱み、ってこういうこと?
お行儀悪く、ケーキのフォークをくわえたまま、上目遣いに睨んでみる。
へちょりと申し訳なさそうな顔、確かにしてるんだけど……こうね、眼の色がね。なんというか、悶えてる感じ? 萌えられてますか? そうですか。
あーあ、と、がっくりうなだれる。
子ども扱い、別にいいけれど。
ちょっと残念、と、深くため息を付けば。
釣られるように、店長までため息を付くのでした。
------8×-------- 8× -------- キリトリセン --------8×-------- 8×--
恋したくなるお題 様より
http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/
店長と二人だけの、朝から夕方までの時間。
――時々、店長の手がわきわきしてるの、気のせいでしょうか?
お仕事は、基本朝から始まる。
店の掃除をして、カフェの客席の掃除。それが終わったら、入荷した品物の品出し。
メニューはドリンク中心で、ケーキが少々。
雑貨屋さんで買ったものを、カフェで眺めながらくつろぐような、そんな場所。
商品の品出ししてる間に、店長が仕込みの仕上げしてて。
商品の受取は、だいたい店長がしてくれるんだけど、そうじゃない時も、あるわけで。
「どうも、ありがとうございまーす」
「どうもー」
荷物をみて、首を傾げる。普段の入荷分とは違う、追加入荷っぽい品物。結構大きな箱で、なんだろなこれ、と、思いながら、もてるかなー、と、持ち上げてみた。
「……みえないし」
そこまで重くなかったから、なんだろうなこれ、と、思いつつ、持ち上げたんだけど。前が見えない。超見えない。
どうしたもんかな、と、思うけど、ここからならば見えなくてもぎりぎりイケルかな、と、ちらちら横から覗きながら運んでいたらば。
「あああっ、だいじょうぶですか?」
ひょい、と顔をのぞかせたらしき店長さんが、慌てて飛び出してきて。箱をひょい、と持ち上げるから。
「うひゃっ。あ、はい、えと平気です」
……思わず箱ごと持ち上がるかと思ったじゃないか! いや、それは多分ありえないけどっ。
見あげれば、なんだかこう……緩んだ表情の店長。さくさくと箱を運んで、それからこちらにぐるっと戻ってきた。
目がランランと輝いてる。な、なに?
思わず後ずされば、両手を差し出された。
あ、やなよかん。この位置って……。
「っ、ぎゃー!」
すっと差し出された両手が脇の間に差し込まれて、ひょい、と持ち上げられた。
いわゆる子どもを抱き上げる感じ。なにこれ、なにこれ、なにすんの!
ふしゃー、と威嚇するみたいに睨んだら、嬉しそうに笑われた。
「すみません、あんまりかわいくて我慢できませんでした」
……すっごいセリフなんだけど、この体制ではうれしくないですから!
むっすりと膨れた私に、今日のセットメニューのケーキを賄賂として差し出しながら、店長は困ったように笑う。
曰く、荷物が歩いてきてるようで可愛かった、と。
曰く、ここしばらく、ずっとこう抱きあげたくってどうしようもなくてうずうずしてた、と。
ごめんね、と、まゆをへにょりとさせていわれれば、よくないけど、いいですよって言ってしまう。
――惚れた弱み、ってこういうこと?
お行儀悪く、ケーキのフォークをくわえたまま、上目遣いに睨んでみる。
へちょりと申し訳なさそうな顔、確かにしてるんだけど……こうね、眼の色がね。なんというか、悶えてる感じ? 萌えられてますか? そうですか。
あーあ、と、がっくりうなだれる。
子ども扱い、別にいいけれど。
ちょっと残念、と、深くため息を付けば。
釣られるように、店長までため息を付くのでした。
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