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[物語]02. ぶかぶかの上着は彼そのもの

2012.01.19 Thu [Edit]
アルバイトをはじめて、一ヶ月がすぎました。

雑貨屋と喫茶が合体したようなこの店は、素敵なのだけれどどこかひっそりといつもしていて。その小物のセンスとか、喫茶……カフェ、かな? のメニューがお気に入りで、こっそりと通ってた店で。だから、ここでアルバイトできることをとても喜んでいたのだから、あの、遅刻というアクシデントがありながらも雇ってもらえたことは、とってもとっても、嬉しいのだけれど。

「てんちょー、掃除終わりましたーっ」

店の厨房で、仕込みをしているらしい彼にそう声をかければ、のそり、と、お皿を手にした彼が、こちらにやってきて。にっこり、笑顔。相変わらずでっかい彼は、爽やか好青年風ではあるけれど、大きいから、くまさんみたいで。

「ああ、はい。ありがとうございます。これ、どうぞ」

――だから、どうして、頭をなでるんですか、店長。

――ご褒美ですっていいかけたでしょうっ、いまっ!

とっても素敵なバイト先ではあるのですが、どうにもこうにも、子供扱いされている感が否めない、今日この頃です。






私の身長は145センチ。これってば、小学校5~6年生の平均身長と同じくらいなのかな。つまりは、ちびなわけで。体のラインとかは、ちゃんと成長してるし、子ども子供してるわけじゃない、と、思うんだけれど。顔は、まぁ、うん、童顔系ではあるけれど、メイクもちょっとはしてるし(がっつりすると似合わないの)、子どもっぽくないとは思うんだけど。

子ども扱い、は、慣れてるし、身分証明証持ち歩いてないと、おまわりさんにこえかけられることも、たしかにあるけど。服だって、サイズ的に実はティーンズ向けのモノのほうがサイズがあったりするし、もちろんデザインは選んでるけどそれ系きてたりするけれども。

でも、なんでかな。

店長さんに、子供扱いされるのは、ちょっと、うん、ちょっとなんだか、嫌だなって思う。

これでも、成人してるんです。これでも、大人なんです。

まゆを寄せて見返せば、ん? と不思議そうに首をかしげられて。

……口元まで出かかった言葉を、ぐっと飲み込んだ。

――なでられる手が、嫌いじゃないから、だなんて。認めたくないけれど。


店長さんは大きい。もちろん、もっと大きい人が世の中に入るのはしってるけど、周りにいる男性も170センチ代の人ばかりだったから、185センチらしい店長さんは、私にとっては知ってる人の中でもダントツに大きな人。体もがっしりしてて、なんでこんなある意味可愛らしい店やってるんだろって、不思議になる。

今年30になるらしい店長さんは、大学を卒業後、しばらくサラリーマンやってたらしい。そんで、貯金貯めて勉強して、資格とって、この雑貨屋さんとカフェの併設した店を、切り盛りしてるとか。

10近く違うから、大人だなぁ、ってきもするんだけど、でも、10しか違わないのにこう、まるで子どものように扱われるのは、いまいち納得がいかない。

……みんなに子供扱いされて抱き上げられるのも日常茶飯事だったのに、なんでだろ、って思う。思う。――うん、突き詰めたら答えはわかる気がするけど、ちょっと悔しいから目をそらしておく。だって、子どもだとおもわれてるのに、ほんとくやしいじゃない。

最近、お店にはお客さんが増えた気がする。

でっかい店長と、小さい店員(わたし)。その組み合わせが面白いらしくって、評判になったらしい。といっても、まだひっそりと、だけれど。

見世物ですか? とおもうけれど、このカフェの料理も飲み物も、おいしいし、試しに来てみて常連になるって人もそこそこいるみたいな感じ。――私も、このお店のファンだったしね。

でも、今日はなんだか、いつもよりも色々きになって、気がそぞろで。仕事中だっていうのに、少しだけぼんやりしてたら。

お水を運ぼうと歩いているときに、お客さんとぶつかってしまった。

がしゃん、と、コップの割れる音。
なんとか、お客さんにかからないようにはしたけれど、ああ、大失敗、と、私は青くなる。

何度も頭を下げれば、お客さんは笑ってゆるしてくれた。後ろからのっそりとやってきた店長も頭をさげて、さっくりと片付けしてくれて。

「……すみませんでしたっ」

バックに戻って頭を下げたら、困ったように笑った店長が、首を振って。

「怪我、なかった?」

「あ、はい。だいじょうぶです」

「うーん……ちょっと服が大丈夫じゃないかな」

見下ろせば、制服がわりのシャツと黒のスラックスのうち、シャツが濡れてる。どうしよう、着替えなんてない、と、青ざめてれば、うーん、と少し考えた店長が、ロッカーへと歩く。目で追っていれば、何かを取り出した店長が、はい、と、差し出してくれたのは、綺麗に現れた白いシャツ。――ただし、店長サイズ。

困ったように見つめてれば、同じく困ったように笑う店長。

「でっかいけど、とりあえず。あ、ちゃんときれいに洗ってあるから」

「あ、はい。……ありがとうございます」

「うん、着替えて。一応今お客さん落ち着いてるから、ゆっくりでいいよ」

そういって、ぽんぽん、と頭を撫でて、去っていく店長。ぼんやりとそれを見送ってから、濡れた服をのろのろと脱ぐ。ああ、ブラまではいってないっぽい。セーフセーフ。と、脱いだあと、そっと広げたシャツは、とても大きくて。どうしよう、と、思いつつ、とりあえず羽織ってから、前を留める。……大きすぎる。あれだ、父親のシャツを着た子ども。そう思ってしまってがっくりと項垂れつつ、裾はスラックスの上に出してから、ベルトで抑えて。袖はいっぱい折り曲げて。

鏡に映る私は、なんだか余計子どもみたいで。

深く深くため息を漏らす。

――ああ、でも。

これが二人のサイズの差。大きなシャツは、彼のサイズ。彼に包まれてる、とか、ぽんと浮かんだフレーズに愕然とする。なんだこの乙女チックな思考は!

ぶんぶんと首を振って振り払い、大きく深呼吸。
よし、と、気合をいれたら、お店に向かう。

――どうか頬が赤くなってませんように。

ただそう願いながら、仕事に戻る私なのでした。

------8×-------- 8× -------- キリトリセン --------8×-------- 8×--

恋したくなるお題 様より
http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/

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