1.仕方ないだろ初めてなんだから
2011.12.22 Thu [Edit]
明日は誕生日だ。
冬休み中に誕生日がある、っていうのは、すこしばかり損な気がする。それでも、小学校の頃はみんなで集まってお誕生会なんてしてたけれど、中学生になるとなんとなくそれも子どもっぽいようで恥ずかしくて、なくなっていった。小さい頃から一緒の、親友なんかは、きっと忘れないでいてくれると思うけれど、同級生の誕生日なんて、誰もきっと知らない。別に、何が何でも祝って欲しいわけじゃないけど、ちょっとだけ損な気がする。
明日の晩御飯は、きっと大好きなおかずばかりだ。お母さんは最近、っていうか、中学生になってから勉強勉強っていったり、いろいろ口うるさいけれど、それでも、きっとケーキは忘れない。今日、買い物の手伝いにつれてかれたとき、お母さんエビかってたから、きっとエビもいっぱい。サラダでも、エビフライでもいい。そう考えたら嬉しくて、くふくふと笑いが出てきた。
年末お正月を通りすぎて、新年って言うには少し間が抜けてて、だけど、まだ新しい年が始まったばかりだから、すこしばかり夜更かししても見逃してもらえる。別にもう、誕生日だからって浮かれる年じゃないけれど、でも、なんだかちょっとだけドキドキして、なんだかすごく眠れない感じで、それでも布団にもう入ってないと叱られちゃう時間だから、布団の中でお気に入りの抱きまくらなぬいぐるみを抱きしめて、ひとりくふくふと笑った。
それでも眠れないから、携帯を手に取る。中学に入ってから買ってもらった、シンプルな携帯。本当はもっといいやつがほしかったけれど、電話とメールと、ゲームを少しだけしか使わないようにって、程々のにされた。それでも遊ぶにはちょうどいいし、制限かかってるけどそれなりに楽しい。親友は多分、日付が変わると同時にメールをくれるかもしれない。くれるんじゃないかな、くれるといいな、なんて思うと、携帯弄りながらどきどきする。もし、来なかったらちょっと悲しいかな、なんて、私ばっかり友達が大好きみたいで、いつか嫌われたらどうしようとか、そんな風に考えることもあって、でも、仲良しだからダイジョブ、とか、思ってしまう。
小学校の頃はよかったなぁ、と、思う。男の子も女の子も、誰でも関係なくって、お互い泣きながら喧嘩して、泣きながら謝ったらまた一緒に遊んで、って、そんな感じだった気がする。でも、中学生担った途端に、なんだか男の子と女の子は別々になって、一緒にいると周りがひそひそにやにやしてる。喧嘩も、泣きながらするようなのじゃなくって、気がつけば離れてて、挨拶してくれないなんてことも、ある。まぁ、しばらくしたらまた挨拶してくれたりするから、本当によくわかんない。
一緒に遊ぶ友達が、綺麗に男の子と女の子別々になって、一緒に遊ばなくなった友達が増えた。中学になってすぐの頃は、一緒に遊んでたけど、だんだん周りの雰囲気につられるように別々になった。小学校の高学年の頃からそんな雰囲気はあったけど、もっとこう、生々しい感じがして、ちょっといやだ。友達じゃ、だめなのかなぁ、むつかしいなぁ、なんて、思うけど、よくわからない。
布団の中でぼーっと天井を見ていると、いろんなことを考える。けど、ほとんどが答えがでなくて、ぼーっと考えるだけ。よるは考え事するといっぱいいっぱい考えられるけど、朝になるどどうでもいいように思えることばかりなのは、なんでなのかな。
そんなこと考えてたら、携帯からアラームがなる。思ったより音が大きくて慌てて止める。日付がかわったみたい。こんな時間まで起きてるのはおおみそかくらいだけど、今日はいいことにする。
「おめでとう、わたし」
ぽつん、とつぶやいて、携帯を眺める。メールはまだ来ない。と、思った瞬間、電話がなった。
「あ、わ、な、なに」
びっくりして、急いで通話ボタンを押す。
「も、もしもし?」
電話の向こうからは、何も聞こえない。何度か声をかけるけど、返事がなくって、首を傾げる。慌てて電話でたから、番号見てなかった、と、携帯から耳を離そうとしたら、小さな声が聞こえた。
「誕生日、おめでと」
それは、去年まではよく聞いてた声で、一緒に遊んでた声で、びっくりする。
「え! ええ、えと、ありが、とう」
なんで、なんで彼が電話をしてくるの? 番号……は、教えたかもしれないけど、でも、一学期のうちに彼とは話をしなくなって、ずっと話したりあったりしてなかったのに。驚いてわたわたしてると、再び声が聞こえる。
「窓のとこ、みて」
言われるままに窓のところにいって、カーテンを開けると、部屋の窓の下、兵のところに人影があって。え? と思って目を凝らすと、そこには、彼の姿があって。
「え、ええええ!」
「しっ、声が大きいって!」
慌てて口を手で塞いで、右、左、と眺めて。
「ま、まってて!」
「え、ちょとま」
声が聞こえたけど耳から電話をはなして、パジャマの上から上着来て、寒いからマフラーも巻いて、部屋を飛び出す。今日はもうみんな寝てる。お母さんもお父さんも寝てるはず、とそっと部屋を伺うけど静かで、抜き足差し足で階段を降りる。それから、玄関。鍵を開けるときにちょっと音がして、びくっってなったけど、起きた感じじゃなかったから、急いで靴を履いて、そぉっと扉をしめて、それから、かけ出した。
息が白い。すごく寒い。慌てて駆け寄れば、電灯の下、彼が鼻の頭を真っ赤にして、マフラーに顔を埋めるようにしながらポケットに片手を突っ込んで、片手には携帯をもって、こちらを呆れたようにみてた。
「ったく、夜中だろーが、出てくんなよ。電話もきってねーし」
ぶっきらぼうにそんな風にいうから、思わずうつむく。
「ごめん……」
「あ、いや、そうじゃなくて、っていうか、これ! 誕生日おめでとう」
ぐい、と目の前に差し出されたものを見れば、小さな紙袋。なんだろう、と、見あげれば、更にぐい、と突出される。そっと受け取って、彼を伺えばうなづくから、中を覗いてみる。
小さな、ぬいぐるみ。私の抱きまくらと同じシリーズの。私の好きなキャラの。
驚いて顔を上げれば、顔を真赤にした彼がいて。
「な、なんだよ。もんくあるのかよ。仕方ないだろ、女にプレゼントやるとか、初めてなんだから!」
慌てて首を振る。文句なんてない。あるわけがない。なんだかどきどきして、寒いからだけじゃなくてほっぺのところが熱い気がするけど、でも、嬉しくて、嬉しくて、なんだかむずむずした。
「ううん、嬉しい。ありがとう!」
「ば、べ、べつに。じ、じゃあ、俺帰るし!」
くるり、と、身を翻して走り始めた彼を、見るともなく見送っていれば、彼はくるりと方向転換して、再びこちらに戻ってきて。
「っていうか、お前馬鹿か! さっさと家にはいれよ!」
すごい剣幕でいうから、はいっ、って返事して、急いで玄関に戻る。扉を開けて入る瞬間、振り返ったらこっちを見てさっさといけって感じて手を振る彼に、おやすみなさい、ありがとう、って口パクで伝えたら、一瞬目がまんまるになって、それからなんだか怖いような顔になって、さっさといけって口パクでいわれた。
急いで玄関に入って、そおっとそおっと階段を上がって、部屋に戻る。それから、慌てて窓の外を見れば、彼が一瞬窓の方を見上げて、そして帰って行く所で。袋から取り出したぬいぐるみをぎゅってにぎりしめて、その背中をずっとみてた。見えなくなるまで、みてた。
なんだか、恥ずかしいようなうれしいような、不思議なような、じたばたしたいような、きゃーって叫んでしまいたいような、そんな気持ちがぐるぐるぐるぐる渦巻いて。上着を脱いで、ぬいぐるみを抱えて、ベッドに一気に飛び込んだ。
もう眠れそうになかったから、そっと携帯でメールを送った。
「ありがとう。おやすみなさい」って。
初めて彼からプレゼントを貰った日の、思い出。
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管理人:ノラ
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「慣れてない彼のセリフ」より
冬休み中に誕生日がある、っていうのは、すこしばかり損な気がする。それでも、小学校の頃はみんなで集まってお誕生会なんてしてたけれど、中学生になるとなんとなくそれも子どもっぽいようで恥ずかしくて、なくなっていった。小さい頃から一緒の、親友なんかは、きっと忘れないでいてくれると思うけれど、同級生の誕生日なんて、誰もきっと知らない。別に、何が何でも祝って欲しいわけじゃないけど、ちょっとだけ損な気がする。
明日の晩御飯は、きっと大好きなおかずばかりだ。お母さんは最近、っていうか、中学生になってから勉強勉強っていったり、いろいろ口うるさいけれど、それでも、きっとケーキは忘れない。今日、買い物の手伝いにつれてかれたとき、お母さんエビかってたから、きっとエビもいっぱい。サラダでも、エビフライでもいい。そう考えたら嬉しくて、くふくふと笑いが出てきた。
年末お正月を通りすぎて、新年って言うには少し間が抜けてて、だけど、まだ新しい年が始まったばかりだから、すこしばかり夜更かししても見逃してもらえる。別にもう、誕生日だからって浮かれる年じゃないけれど、でも、なんだかちょっとだけドキドキして、なんだかすごく眠れない感じで、それでも布団にもう入ってないと叱られちゃう時間だから、布団の中でお気に入りの抱きまくらなぬいぐるみを抱きしめて、ひとりくふくふと笑った。
それでも眠れないから、携帯を手に取る。中学に入ってから買ってもらった、シンプルな携帯。本当はもっといいやつがほしかったけれど、電話とメールと、ゲームを少しだけしか使わないようにって、程々のにされた。それでも遊ぶにはちょうどいいし、制限かかってるけどそれなりに楽しい。親友は多分、日付が変わると同時にメールをくれるかもしれない。くれるんじゃないかな、くれるといいな、なんて思うと、携帯弄りながらどきどきする。もし、来なかったらちょっと悲しいかな、なんて、私ばっかり友達が大好きみたいで、いつか嫌われたらどうしようとか、そんな風に考えることもあって、でも、仲良しだからダイジョブ、とか、思ってしまう。
小学校の頃はよかったなぁ、と、思う。男の子も女の子も、誰でも関係なくって、お互い泣きながら喧嘩して、泣きながら謝ったらまた一緒に遊んで、って、そんな感じだった気がする。でも、中学生担った途端に、なんだか男の子と女の子は別々になって、一緒にいると周りがひそひそにやにやしてる。喧嘩も、泣きながらするようなのじゃなくって、気がつけば離れてて、挨拶してくれないなんてことも、ある。まぁ、しばらくしたらまた挨拶してくれたりするから、本当によくわかんない。
一緒に遊ぶ友達が、綺麗に男の子と女の子別々になって、一緒に遊ばなくなった友達が増えた。中学になってすぐの頃は、一緒に遊んでたけど、だんだん周りの雰囲気につられるように別々になった。小学校の高学年の頃からそんな雰囲気はあったけど、もっとこう、生々しい感じがして、ちょっといやだ。友達じゃ、だめなのかなぁ、むつかしいなぁ、なんて、思うけど、よくわからない。
布団の中でぼーっと天井を見ていると、いろんなことを考える。けど、ほとんどが答えがでなくて、ぼーっと考えるだけ。よるは考え事するといっぱいいっぱい考えられるけど、朝になるどどうでもいいように思えることばかりなのは、なんでなのかな。
そんなこと考えてたら、携帯からアラームがなる。思ったより音が大きくて慌てて止める。日付がかわったみたい。こんな時間まで起きてるのはおおみそかくらいだけど、今日はいいことにする。
「おめでとう、わたし」
ぽつん、とつぶやいて、携帯を眺める。メールはまだ来ない。と、思った瞬間、電話がなった。
「あ、わ、な、なに」
びっくりして、急いで通話ボタンを押す。
「も、もしもし?」
電話の向こうからは、何も聞こえない。何度か声をかけるけど、返事がなくって、首を傾げる。慌てて電話でたから、番号見てなかった、と、携帯から耳を離そうとしたら、小さな声が聞こえた。
「誕生日、おめでと」
それは、去年まではよく聞いてた声で、一緒に遊んでた声で、びっくりする。
「え! ええ、えと、ありが、とう」
なんで、なんで彼が電話をしてくるの? 番号……は、教えたかもしれないけど、でも、一学期のうちに彼とは話をしなくなって、ずっと話したりあったりしてなかったのに。驚いてわたわたしてると、再び声が聞こえる。
「窓のとこ、みて」
言われるままに窓のところにいって、カーテンを開けると、部屋の窓の下、兵のところに人影があって。え? と思って目を凝らすと、そこには、彼の姿があって。
「え、ええええ!」
「しっ、声が大きいって!」
慌てて口を手で塞いで、右、左、と眺めて。
「ま、まってて!」
「え、ちょとま」
声が聞こえたけど耳から電話をはなして、パジャマの上から上着来て、寒いからマフラーも巻いて、部屋を飛び出す。今日はもうみんな寝てる。お母さんもお父さんも寝てるはず、とそっと部屋を伺うけど静かで、抜き足差し足で階段を降りる。それから、玄関。鍵を開けるときにちょっと音がして、びくっってなったけど、起きた感じじゃなかったから、急いで靴を履いて、そぉっと扉をしめて、それから、かけ出した。
息が白い。すごく寒い。慌てて駆け寄れば、電灯の下、彼が鼻の頭を真っ赤にして、マフラーに顔を埋めるようにしながらポケットに片手を突っ込んで、片手には携帯をもって、こちらを呆れたようにみてた。
「ったく、夜中だろーが、出てくんなよ。電話もきってねーし」
ぶっきらぼうにそんな風にいうから、思わずうつむく。
「ごめん……」
「あ、いや、そうじゃなくて、っていうか、これ! 誕生日おめでとう」
ぐい、と目の前に差し出されたものを見れば、小さな紙袋。なんだろう、と、見あげれば、更にぐい、と突出される。そっと受け取って、彼を伺えばうなづくから、中を覗いてみる。
小さな、ぬいぐるみ。私の抱きまくらと同じシリーズの。私の好きなキャラの。
驚いて顔を上げれば、顔を真赤にした彼がいて。
「な、なんだよ。もんくあるのかよ。仕方ないだろ、女にプレゼントやるとか、初めてなんだから!」
慌てて首を振る。文句なんてない。あるわけがない。なんだかどきどきして、寒いからだけじゃなくてほっぺのところが熱い気がするけど、でも、嬉しくて、嬉しくて、なんだかむずむずした。
「ううん、嬉しい。ありがとう!」
「ば、べ、べつに。じ、じゃあ、俺帰るし!」
くるり、と、身を翻して走り始めた彼を、見るともなく見送っていれば、彼はくるりと方向転換して、再びこちらに戻ってきて。
「っていうか、お前馬鹿か! さっさと家にはいれよ!」
すごい剣幕でいうから、はいっ、って返事して、急いで玄関に戻る。扉を開けて入る瞬間、振り返ったらこっちを見てさっさといけって感じて手を振る彼に、おやすみなさい、ありがとう、って口パクで伝えたら、一瞬目がまんまるになって、それからなんだか怖いような顔になって、さっさといけって口パクでいわれた。
急いで玄関に入って、そおっとそおっと階段を上がって、部屋に戻る。それから、慌てて窓の外を見れば、彼が一瞬窓の方を見上げて、そして帰って行く所で。袋から取り出したぬいぐるみをぎゅってにぎりしめて、その背中をずっとみてた。見えなくなるまで、みてた。
なんだか、恥ずかしいようなうれしいような、不思議なような、じたばたしたいような、きゃーって叫んでしまいたいような、そんな気持ちがぐるぐるぐるぐる渦巻いて。上着を脱いで、ぬいぐるみを抱えて、ベッドに一気に飛び込んだ。
もう眠れそうになかったから、そっと携帯でメールを送った。
「ありがとう。おやすみなさい」って。
初めて彼からプレゼントを貰った日の、思い出。
-------8×-------- 8× -------- キリトリセン --------8×-------- 8×--
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「慣れてない彼のセリフ」より
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