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2.硝子に映える澄んだ白

2011.12.11 Sun [Edit]
案内された部屋は、やたらと豪華な部屋だった。無駄に派手派手しい様子は、わが国では見られぬもの、こちらの国はどうやら、このような装飾が好まれるらしい。

――否。

情報は確かのようね、と、姫は内心でひっそりと笑う。その笑顔を見咎めてかこちらをみる一人の青年、この国の王太子にしてわが夫となる人物に、何気ないそぶりで笑顔を返した。

また後程に、と挨拶を交わし、静かに退室していったこの国のものたちの姿を見送ると同時に、この部屋付きだと紹介された数名の侍女たちには仕事を言いつけて下がらせる。応接の間の隣、完全な私室となる部屋で、国からついてきた侍女と二人になった姫は、うっそりとほほ笑んだ。

「この国で、正解だったようだわ」

しかし、姫の忠実なしもべたる侍女は、その眉を顰めて、首を振る。

「どこがです。あのような公式な場だというのに、妙に派手派手しくまるで夜会のような、それもどこか品のないほどのドレスをまとうような妃たちのいる国ですよ。どれほど後宮が腐っていることか。つけられた侍女たちだってどこまで信頼できるものか」

先ほど下がっていった侍女たちの、こちらを品定めするような表情を思い浮かべ、再び首を振って見せれば、姫たる娘はくすくすとどこまでも楽しげに笑い声を零した。

「馬鹿ね。リスクが大きければ大きいほど、戻りは大きいものなのよ」

ニヤリ、と、微笑んだその顔は、悪戯めいた表情でありながら、どこまでも艶やかだった。





この国に嫁ぐ、と決めたのは、姫本人だった。当初、周囲からは寵愛深いが故の反対のほかに、その裏を知ることからの反対も、激しいものだった。

――浪費の激しい妃とそれを許す王の国。
――唯一国の手綱を握る王太子も、命を狙われる国。

それらの言葉を、姫を愛する国の人々は、直接耳に入れるのははばかりながらも、手を変え品を変え、かの国はやめておけと言葉は違えど皆同じことを告げてきた。けれど、姫は首を振る。かの国へ嫁ぎたい、かの王太子の妃となりたいのです、と、かたくななまでにそう繰り返す姫は、訝しがる周囲に、涙ながらにこう告げたのだ。

かの王太子をお見かけした際、一目で恋に落ちました。
かの方以外に嫁ぐことなど、考えられませぬ。
どうか、どうかわたしをかの国へ嫁がせてくださいませ。

その美しい瞳を涙に潤ませ、震える声で告げるその儚げな様子に、人々は折れた。

王太子個人は悪くないのだ。それに、国自体もまだ悪いものではない。ならば、姫の身を守れるだけの配備を行って嫁がせるしかないではないか。

喜びに頬を染め喜ぶ姫に、王は、そして兄王子たちは、仕方なさげにそう許可をだしたのだった。――姫がうっそりと、微笑んでいることなど誰も気づきはしなかった。

もちろん、姫とて何もしなかったわけではない。ひっそりと変装をし誰にも知られずに下町に出入りすることも多い姫である。そう、彼女を寵愛する周囲の人々は誰もそれを知らない。その下町で、ひたすらに趣味に没頭しつつもかの国の情報を集め、噂話を聞いた。彼女が出入りしていた周辺はそれはそれは治安がよろしくない界隈でもあったので、それなりに面白い噂を聞くことができた。

――かの国からのがれてきたという一人の男と出会ったのも、そこでのことである。

そして、彼女は着々と、表と裏の両方で準備を整えた。渋る側付きの侍女をなだめながら、無事準備を整え、この国へと乗り込んできたのだった。

そして、そのひとつは早速実を結んだ。なんとまぁ、愚かなことだろう。姫の母国たる国は、勢いは強くないが、古くそれなりの安定した国である。その底力たるや、侮れぬものではないだろうに、そこを考えることのできないものがこの国には普通に存在している。なんということか、と、その状況に憤るのが普通なのだろうが、姫にとってはそれもひとつの楽しみであり、これからに思いをはせると、胸が高鳴る要因でしかない。

幸い、王太子はまとものようで、表面は取り繕っていたが何やら心労堪えぬ様子、さて、これからの行動が彼にとって幸いとなるか、更なる心労のタネとなるか――それもまた、楽しみなことだった。

「姫様、お顔が悪くなっておられますよ」

そっと注進に及ぶ侍女の呆れた声にくすりと笑い声を漏らして、姫はゆっくりと、晩餐のための身支度を整えるために侍女に歩み寄る。他のものの手など不要、信頼できる侍女だけがよい、と言えば、むしろそれを王太子は歓迎してくれた。外には信頼できる、ある意味手ごまとなってくれている騎士たちがいることだろう。なにも心配などない。ただ、望むがまま、自らの求める結果をつかむだけだ。

淡い色のドレスに鮮やかに結い上げた髪に、シンプルながら品のある装飾品で飾り終えた姫は、窓辺へと歩み寄る。磨かれたガラスがきれいにはまる窓に映るは、派手だといって過言ではない部屋の調度の数々。その中に淡い色をまとい白い肌の、姫自身が移る。

「ねえ、酷く派手な部屋だけれど、ある意味では悪くないかもしれないわね」

くるりとすそを広げながら振り返れば、呆れつつもどこか賞賛の色を浮かべた事情が微笑む。

「姫様以上に、素晴らしい方はおられませんから」

くすくすとほほ笑む姫は、そっと窓から離れながら、思考を巡らせる。これからのこと、これまで打ってきた手のこと、そして、夫となる王太子のこと、そのさまざまな要因が入り混じり、将来を予測し最善を割り出してゆく。

外より、晩餐の時間の声がかかる。エスコート役は誰が来るだろう。侍女に促されて、ゆっくりと隣の応接の間となっている部屋へと移動する。

さあ、一世一代の時が始まった。

丁と出るか半と出るか。

人生最大の、この賭けだけは、負けられないのだから。


鏡に映るその表情は、白く澄み渡る肌が周囲のちょうどに映えて、どこか儚げであるにもかかわらず、その瞳は楽しげに強い意志を表して、輝いているのだった。



-------8×-------- 8× -------- キリトリセン --------8×-------- 8×--

サイト名:確かに恋だった
管理人:ノラ
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「恍惚の童話5題」より

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