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4.背伸びをするのはやめなさい

2011.11.26 Sat [Edit]
「じ、じゃあ、お試しってことで」

目の前で照れたように笑う人に、頷いた。
どこかぎこちない私の笑顔に、隣に付き添っていた親友が、ばん! と背中をたたく。

「いったぁ……」

涙目になりながら背中を抑えれば、にやにや笑う親友。

「ま、気楽にいきなよ。な、彼氏候補君も、そうおもうだろ」

「あ、ええ。僕としては、お試しでも付き合ってもらえるだけラッキーっていうか!」

真っ赤な顔で、綿綿と言い募る少年に、思わず顔がほころぶ。
うん、大丈夫な気がする。お試しだけど。この子となら、やっていけそう。

――ちらりと浮かんだ面影は、見ないふりしてぎゅっと胸の奥で握りつぶした。



つまり、何がどうなったかというと。
あまりにどんよりしていた私の様子に、クールなようで人情家な親友は、さあはけ、とばかりに問い詰めてきて。答えないわけにもいかないというか……たぶん、私自身が話たかったんだと思う。お兄ちゃんとの会話を、話して。呆れたようにため息をつく親友が、ならば、と、提案したのが。

実際に、お試しおつきあいをしてみましょう大作戦。

長いよ、と突っ込んだら、でこピンされた。ひどい。





まぁ、実際お試ししたいといっても、相手がいなきゃどうしようもないよという私に、親友はにやりと笑って。実は紹介してくれっていうの、数件あったんだよねー、と、語尾をハートにはねさせながら、告げてくれた。

驚く私の状態もなんのその、その数名の名前を挙げ、そのうえでお勧め、という少年にその場で電話。お試しおつきあい、という条件に了承を得て。
そしてその日の放課後にご対面。冒頭に戻るわけで。

そんなわけで、生まれて16年。初めて彼氏ができました。仮だけどね。

で、どうしたらいいのかわからない私は、とりあえず、少年と一緒に帰宅することになって。朝も、路線は違うけれど駅で合流できそうだと少年がいうので、そうすることになって。ただ、慣れないからどうしていいかわからなくて、無言のままもくもくと二人で歩いて。いや、少年は最初一生懸命話しかけようとしてくれたんだけども、私がうまく返せなかったっていうか。しょうがないけれど、そんな風な状態で。あれー、私ってこんなに人見知りだったかなぁ、なんて、疑問に思いながらも、一応こう、たまには一緒にお昼を食べたりとか、放課後ちょっとだけ寄り道したりとか。そんな風に彼氏彼女っぽく、それっぽく、過ごしてはいたのだけれど。

……違和感、というか。隣を見て、たまに話が弾んで、顔をみたら、少年で。その瞬間に違う、なんて思ってしまう自分がいて。そのまま黙ってしまう私に、少年は心配してくれるけれど、ごまかすしかできなくて。
少年は、たぶん、本当に私のことを好きでいてくれるんだなって。会話の合間の照れたような仕草やら、声やら、時々たぶん手をつなぎたいのかなって感じで動く手から、感じられて。
少年のことを好きになれたら、最高に幸せになれるんだろうな、なんて。思うのに。

手をつなごうとされたのを、思わず、静かに避けてしまったり。
触れようとする手の温もりが怖くて、体を引いてしまったり。

……そんなことを繰り返して、次第に気まずくなり始めた、頃。

「デートしましょう」

そう少年がいうから。思いつめた表情で、まっすぐにいうから。潮時なのかな、と、頷いた。

日曜日。

近くの繁華街で待ち合わせて。二人で、映画を見て。食事でもしようか、と、街を歩いて。

「……おや」

よく知った声が聞こえて、びくり、と、体が震えた。彼だ。間違うはずがない。こわばった私に、不思議そうに彼は近づいてきて――隣の少年に気づいて。
ぺこり、と会釈する彼に、少年も、訝しそうに会釈を返して。

沈黙。そして。

「……デート、ですか」

ぽつん、と、聞こえた声に、はっと顔を上げると、じっとこちらを見つめる彼の眼があって。
答えられなくって、どうしよう、って思ってたら。ぐ、っと、腕を引かれて。少年がいたんだ、って、振り返ると、どこか真っ直ぐな強い目で、彼を睨むようにみる、少年の姿。

「デートです。失礼します」

ぺこり、と、再び少年は頭を下げると、私を引っ張るように歩き始めて。

「あ、え、ちょ。う、おにいちゃ、またね」

それだけを彼に告げて、引かれるままに少年と共にその場を後にした。

ずんずん、ずんずん。少年は足を止めることなく進む。ついて行くのに必死で息が上がる。やがて少年は、小さな公園へ着くと、やっと私を振り返って。はっ、と我に返ったように手を放すと、申し訳なさそうに眉を下げた。

「ごめん。……勝手なことして」

何も言えずに、首を振る。息が苦しい。

「あの人が、好きなんだね」

はじかれるように顔を上げれば、切なそうな痛そうな表情の少年。

「ご、ごめんなさい。ごめんなさい……っ」

「謝るな!」

大きな声にびくり、と、震える。おびえに気づいて少年は、昂ぶりを抑えるように息をついて。

「……忘れるため、だったんだね。ねぇ、僕じゃ、だめ?」

じっと見つめながら。切ない、痛むような目を、向けながら、彼は静かに、静かに言葉を紡いだ。

――こたえなんて、ひとつしか、持ってなかった。


とぼとぼと、家路をたどる。
夕暮れの街は、朱色に染まって。周りの人は忙しそうに歩いている。
とぼとぼ、とぼとぼ、と、うつむいて歩いていると、ふと、足元に影が見えた。
視線をす、っとあげれば、目の前に彼。無言で、じっとこちらをみている。

「おにい、ちゃ」

「何をされたんですか?」

「え……?」

「何かされたんじゃないんですか? ――そんな、今にも泣きそうな顔して」

すっと伸ばされた手。近づく手。そのままゆっくりと目じりに触れる指。一度目を閉ざして。開けば。
彼が、かなり近くにいて。どきん、と、心臓が高鳴った。
いけない。いけない。期待させないで。

「べ、別に。だ、大丈夫だよ。何もないもの」

す、っと、一歩下がる。これが私とお兄ちゃんの距離。近すぎちゃいけない。近づけない年齢の距離。

笑え。笑うんだ。

「ちょっと、喧嘩しただけだよ。付き合ってるんだから、そんなこともあるよね」

――ごめんね、って。謝ったんだ。また。
――もう無理だ、って。ごめんね、って。

――しょうがない、って、笑ってくれたんだ。
――でもあきらめないよって。

「だ、だから、大丈夫よ。もう、お兄ちゃんは心配性だなぁ。私ももう高校生だよー」

くすくす、笑って。そう告げたら。

気が付けば、抱きすくめられていた。暖かい腕の中に、包まれていた。
お兄ちゃんのにおい。彼の、温もり。ぐらり、と揺らぐ心に、一瞬茫然と仕掛けて、あわててそこから抜け出そうとして。

「……背伸びをするのはやめなさい。そんな顔して。ごまかせると思うんじゃありませんよ」

柔らかな、声が、耳元で聞こえて。

――私は、身動きすら、できなくなった。

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