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召使いは時給制

2011.11.20 Sun [Edit]
「それは主(あるじ)さま、今日はここで失礼いたします」

就業時間を終えて、ふわりとお仕着せのメイド服のスカートを揺らしながら礼をする。
深く腰を折りながらも、バランスは崩さない。これって匠の技だよね。
ゆっくりとそのまま体を元に戻せば、部屋の中、中央に置かれたカウチにしどけなく腰かけた、風呂上りらしき艶やかな濡れ髪の主(あるじ)様。先ほど届けたワインを片手に、じっとこちらをご覧になっておられます。

あらやだ、色気がただもれでしてよ?

「もう帰るのか。どうだ、一杯飲んでいかないか」



まぁ素敵なご提案。主様が飲まれるワイン、とてもいいものが多いのですよね。こちらに来てから、私ったらアルコールに強くなったみたいで。おいしいお酒をおいしく飲めるようになったのよね。じゅるり、と内心はよだれぬぐいつつも、必殺メイドの微笑み!

「とんでもないことでございます。一介の侍女風情がそのような。どうかお許しくださいませ」

そそと告げてみたならば、どこかまずいものでも召し上がったようなお顔の主様。まぁ、失礼な。

「今更何を言う。 ならばなんだ、仕事でなければいいのか?」

「いえ、お断りいたします。仕事としてでしたら、お付き合いさせていただきますけれど」

「……どっちだ。まぁいい、座れ」

「失礼いたします」

身のこなしは丁寧に。ゆっくりと邪魔にならないように、カウチのそばへ。

ぽんぽん、って、そこお隣ではありませんか? 座れと? そこに座れと。
にやにやしないでくださいな、主様。エロおやじくさいです。いいませんけど。

しょうがないので腰をおろし。勧められるままに一杯二杯。あらおいしい。
窓の外は綺麗な月夜。これはいい月見ワイン。なんかゴロが悪いですね。

静かにかけられる声に、静かにお応えして。程よく飲み終わったところで、そろそろお開き。

「しかし……かなり飲んだだろうに、崩れないな、お前」

どこか悔しそうな主様。そこそこお酒がまわったのか、色づく頬に濡れた唇、あら、目まで潤んで。これはまた、美形なだけに目の保養ですね。

「ええ、それが取柄でございます。では、今日はこれにて」

礼を取って、からのデキャンタとグラスを載せたワゴンと共に、退室します。

あ、そうそう、忘れるところでした。
出口のところでくるり、振り返って。

「主様、本日、6時間の残業となります。夜間でもありますので割増しで、請求させていただきますので、よろしくお願いいたしますね。それでは」

はじけるような笑顔でにっこりと。そう告げると、今度こそ、静かに礼をしながら部屋を後にしたのでした。

ふっふっふ、お給料、時給制にしといてよかった-。

-------8×-------- 8× -------- キリトリセン --------8×-------- 8×--

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管理人:ノラ
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「歪んだファンタジー5題」より

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