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2.子どもはもう寝る時間です

2011.11.24 Thu [Edit]
帰りたくなかった。
家にまっすぐ、帰りたくなかった。

だって、隣は彼の家。お兄ちゃんの家。
仕事場にこもることの多い彼が、いつもいるわけじゃないけれど。
なんだか、家に帰りたくなかった。

放課後。
昨日まではクラスメイトと、あちこちに出かけたり、友達の家にお泊り会したりして。
高校までずっと一緒だった友人たちは、その親とも仲良しだったりするから、結構気軽に家にちゃんと連絡さえすればお泊り可だったり、連絡入れればある程度遅くまでオッケー、だったりして。
夜遊び、ってほどじゃないけれど、いつもより帰りが遅くなった。
お母さんは心配してはいたけれど、お兄ちゃんのところから帰ってから変だ、ってわかってたみたいで、何も聞かないでくれた。お父さんにもなんとかごまかしてくれてるみたいで。正直、知られてるって怖さはあったけど、でも、ありがたかった。

さすがに今日は、友達たちも用事があるようで、ひとりぼっち。

今までなら、泊まらないまでも、友達とワイワイ過ごすことで気持ちが紛れるし、そのまま帰宅すればその気持ちを持続できるし、で、なんとかのりきってきたけど。

ぽつん、と、一人になると、余計なことを考えてしまう。

嫌われた、という気持ちとか。お兄ちゃんがそんなことで嫌うはずない、という願望とか。年が離れた人を、なぜあんなに好きになったのかな、とか。――もう、会えないかな、とか。
会えないのか、会いたいのか、会いたくないのか。ぐるぐる回る気持ちは複雑で、なかなかこたえがでてこない。考えすぎて熱が出そう。ため息を漏らしながら、それでもまっすぐ帰る気持ちになれなくて、公園へ足を向けた。



小学生たちがきゃいきゃいと遊ぶ公園。昔、私もお兄ちゃんに遊んでもらったなぁ、なんて、思い出す。
よほど小さい時から、私はお兄ちゃんが、彼が好きだったみたいで、足元がおぼつかない時から見つけると駆け寄るような子供だったらしい。おぼろげな記憶の中でも、まだ幼児の私が小学校高学年だか中学生だかのお兄ちゃんに駆け寄っては、遊んでもらおうとしている場面が浮かぶ。

……考えたら、すんごい迷惑な子だったんだね、と。

今更ながらに気が付いて、恥ずかしくて身悶えしてしまう。

――でも。 それでも、好きなんだよなぁ。

なんで、と言われても困るけれど。
そんな風に迷惑な子供だったし、時々、めんどくさそうに困ったように、したけれど。
……遊んでくれたんだよな、子供と。ほっとけよー、なんていう同級生の言葉に、ごめんな、なんてこたえて。つまらなかったろうに幼児である私の相手を、しょうがないなぁなんて顔で笑いながらしてくれて。

甘やかされてた。構ってもらってた。

――それが当然、と、思ってしまうようになるくらいに。

ため息が漏れる。あーあ。自業自得とはいえ、つらいなぁ。もう少し、もう少し、大人になってから、いうつもりだったのに。好きです、って。だから頑張ってここまで立派になりました、って。あーあ。

夕暮れの公園は、日が落ちて、子供の数も減っていく。少し肌寒い気がしてぷるり、と、体を震わせたら。

近くで、呆れたようなため息が聞こえた。

ばっ、とそちらを見れば、彼の姿。え。なんで? どうして? と軽くベンチでプチパニックを起こしていると、少しばかり呆れたような声で、彼が言う。

「何をしてるんですか。バカ娘。遅くまでこんなところで。夜遊びのつもりですか」

「え……なんで?」

「なんで、も、ないでしょう。連絡してないんじゃないですか? いつもの時間に連絡がないのに帰ってこない、と、おばさん心配してましたよ。まったく……どこにいるのかとおもったら」

言われてみれば、今日はそこまで遅くなるつもりはなかったので、連絡はしてなかった。あわてて携帯を取り出して時間を確認。うわ、19時過ぎてる。まだ19時、ともいえるけど、私にしてみれば連絡なしで帰らない時間ではない。
さらに、着信が複数。確認すれば母と……そして、彼からの、着信。

視線を挙げれば、ふう、と、深くため息をついた彼。よく見れば少し汗ばんでるような気がする。――探してくれたの? 私のこと、うっとおしかったんじゃないの? それでも、探してくれたんだ。

「ご、めんなさ……」

「全くです。この公園、遅くなると変質者出るって知ってるでしょう。さあ、帰りますよ」

ぐい、と腕をつかまれて、立ち上がらされる。ぐいぐい。引っ張られるように公園を出る。強い力。でも、転ばないように気を付けてくれてる。昔からこうだった。強くて強引なようで、優しい。

――優しくされたら、諦めきれないよ。

目に涙がたまっていく。何かの拍子にこぼれそうになりながら、家の前について。

「まったく。文筆家なんですからね、運動なんてできないもやしなんですか……ら……」

ぼやきながら振り返った彼が、言葉に詰まる。

ああ、涙。隠せなかった。

ぽろり、と、一滴。ほほを伝ってこぼれていって。

沈黙。何も言えなくて。ただ二人で立ち尽くして。

どうしよう、と、思っていたら、視界に指が見えた。彼の手。少しごつごつして、ペンだこのある手。それが、すっと私のほうに伸びてきて。こぼれた涙を救うように、そっとほほと目じりをなぞるように。

触れる、熱。

驚いて目を見張れば、はっ、と我に返ったように彼の手が戻される。

なに。いったいなに?

「っ。子どもはもう寝る時間です。さっさと帰りなさい」

そういうと、軽く私の背を押して、家のほうに進ませる。
え、どういうこと? そのままふらふらと玄関の前まで進んで。扉に手をかけたところで、振り返ったら。

もう、彼はいなくて。

混乱。困惑。パニック。


――20時じゃ、さすがに、寝るにも早い気がするよ、お兄ちゃん。


私は、ちょうど玄関の物音にきづいて出てきた母に声をかけられるまで、そこに立ち尽くしていた。




-------8×-------- 8× -------- キリトリセン --------8×-------- 8×--

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「年上の彼のセリフ(1)」より

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