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民間資格の魔法使い

2011.11.19 Sat [Edit]
小さいころ、約束したの。

きっと、きっと迎えに来るって。

「りーふぁ、まっててね。きっとつよくなって、むかえにくるから」

遠く離れた処に引っ越していく彼を、見送るしかなかったあの頃。

いつかきっと、また会えるって。むかえに来てくれるって、信じてた。


――けれど。

「……まってられなかったので、来ちゃいましたっ」



てへ、と笑いながら首をかしげて見せれば、彼は茫然と、ずれたメガネを元に戻して。

「ど、どちらさまですか?」

どうやら、10年もたったがゆえに、彼は私のことを忘れたみたいです。

「ひ、ひどい……っ、約束を忘れるなんてっ。むかえに来てくれるっていったのに! 強い魔法使いになって、そしてむかえにきてくれるって! 王都で頑張って宮廷魔術師してるってきいたから、私も魔法勉強しながらまってたのに! なかなか来てくれないから、ここまでいたのに! ひどいぃぃぃぃ」

「え、ええええ? ええと、ちいさいころ? え、あ、もしかして、リーファですか? となりに住んでいた、いじめっ子の」

「え?」

「え?」

「い、いじめてないよ? 酷い!」

「いやだって、ほら、嫌がるのに虫を押し付けたり、嫌いだっていってるのにココルの実を食べさせたりしたじゃないですか」

「え、泣いて喜んでたんじゃ……?」

「そんなわけないでしょう!」

「がーん、ショック……」

「いや、どうしてそこでショック受けられるのかがわかりませんが……まぁ、お久しぶりです。綺麗になりましたねぇ」

「う、うわぁ、王都にいってあなたってば、女たらしになったの? なったの?」

「ちょ、社交辞令をそういう風にとられても」

「社交辞令って!! 最低っ」

「ああああ、とりあえず、落ち着きましょう。ここまではどうやって? 遠かったでしょうに」

不思議そうな彼に、胸を張って答えますとも。

「魔法の勉強をして、資格をとったの。で、さっそく王都まで飛んでみました☆」

きゃるん☆と、首から下げていた資格証を見せれば、驚いたように彼は瞬いて、それから食い入るように資格証を見始めます。いやん、胸元を凝視だわ。

「転移魔法ですか……?! しかもその資格証、国の発行する魔術師資格とは違うようですね。なに、『地方連合協議会認定魔術師』? なんです、これ、地方団体ですか?」

ぷるぷると首を振ります。

「なんか、民間の有志の方々が立ち上げた団体でー、なんと一日5分の練習で魔法が使えちゃう☆っていう、通信教育だよー。遠見の水晶で先生のチェックもばっちり☆ これで私も魔法使いになれましたー」

「……え。なんですか、それ。人が魔法学園に必死で勉強して合格し、さらに学校で鍛えられ、やっとの思いで宮廷魔術師になって、そこまで来て転移魔法が使えるようになったというのに」

「え。1か月くらいで使えるようになったよ、この講座だと」

がっくりと項垂れる彼のそばによって、肩をぽんぽん。

「まぁまぁ。とりあえず、今夜とめてね?」

はっと振り返った彼に、にっこり。

せっかく、資格まで取って会いにきたんだもの。

もう逃がさないんだから☆

彼の運命を知る者は、誰もいない。


余談。
かの民間資格、実は立ち上げたも現在講師をしているのも、実力はあれども人に使えるのメンドイとばかりに引きこもったり自由に生きてたりした超優秀な魔術師たちが、遊び半分で立ち上げたものだったとさ。


-------8×-------- 8× -------- キリトリセン --------8×-------- 8×--

サイト名:確かに恋だった
管理人:ノラ
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「歪んだファンタジー5題」より

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