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王子様はノイローゼ

2011.11.18 Fri [Edit]
「……僕はなぜここにいるんだろう」

王城の豪奢な執務室で、書類を片手に、一人の少年がぼんやりと窓の外を眺めながら呟いた。
少年は身なりから、身分が高いことが察せられる。それもそのはず、この国の王太子として若干15歳ながらも執務の一部を担っていた。

「ああ、鳥だ……空を飛べたら自由になれるかなぁ……あはははは」

しかし、覇気がない。茫洋と窓の外を眺め、まるで棒読みでつぶやく。

「……執務中ですよ」

傍らに控えていた侍従が、遠慮がちに声をかける。が、聞こえないのか振り向きもしない。

「ああ……遠くにいきたいなぁ。海の向こうの新大陸にでもいきたい。もう、もういいじゃないか、もうさ、やりたいっていうなら、ぜーんぶ、譲るからさ、もう、ほっといてくれよってね」

無表情のまま、窓の外を眺めつつ、つぶやき続ける少年。


と。



がしゃーんと窓が割れて、黒ずくめの装束の男が飛び込んでいた。

「お命頂戴仕る!」

「殿下!」

そのまま襲い掛かる男に、侍従が王子を守るように飛び出し、控えていた騎士たちも臨戦態勢となる。

きん! と、男の攻撃がはじかれ、緊迫した空気の中、騎士と男が切り結ぶ。

「あ……」

ぽつり、と。そんな中王子が声を漏らす。

「ああああああもう! そんなに俺が王太子やってんのいやなんだったら、やめてやる! やめてやるよちきしょー!! 」

ばん!! と、机をひっくり返しそうな勢いで、王子が叫ぶ。

「で、殿下、何を!!」

「だってそうだろうよ! ロクに仕事を手伝うわけでもないのに王になりたいとかいいながら俺を狙ってくる弟どもも、ロクに政治のあれこれもなんもわからん上に浪費だけは激しい弟どもの母親どもも、もうもう、勝手にしろってんだ! 好きに勝手にやればいい、俺はもう知らん。もうもう、もう知らん! 父上が大変だからと手伝ってはいたが、その父上だって馬鹿な子ほどかわいいんだかなんだかしらんが弟どもをかばいやがるし、そのうえその馬鹿な母親たちも、惚れてんだかなんだかしらんが放置しやがる。この国、ぎりぎりだぞ? 経済状態ぎりぎりなんだぞ? それをおっまえ、仕事もしねーでかねばっか使っておいて、王位継承の儀が近いからってここまでざかざか暗殺者やら毒やら仕込まれたんじゃ、俺やってられねぇって! 国のため、民のためって思ってここまでやってきたけど、もう限界。もう無理。もう勘弁。生まれた時から命狙われてたけど、10超えてからは仕事手伝いながら頑張ってきたけど、もー、限界。俺、出てく。絶対この国でてってやる!」

一気にそれだけ告げると、机の上の書類をなぎ倒し、部屋から出ていく。

「っ、で、殿下ぁぁ?!」

足音高くその場を去る王子の姿に、室内は一瞬茫然としたが、あわてて騎士の一部と侍従が後を追う。

残されたのは騎士と相対していた暗殺者のみ。

気まずい沈黙が続く。

そっと視線を逸らした暗殺者は、静かに剣を引くと、頭をかいた。

「まぁ、なんだ……うん、なんか悪かったな」

なんとも言い難い暗殺者の男の言葉に、騎士も剣を引きつつ、なんともいえない表情を返す。

「……まぁ、まだ殿下も若いからな。しかし、あそこまでとは……」

殿下、ご乱心。

はたしてこの国がこれからどうなっていくのか、不安に襲われる騎士と暗殺者だった。


とりあえず、終わり。


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「歪んだファンタジー5題」より

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