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[掌編]恋心のゆくえ

2013.10.24 Thu [Edit]
Rain / Tree
Rain / Tree / diongillard



「彼と、付き合えそう、なんだ」

そう、彼女はつぶやいた。

秋の雨が静かに、校庭に降り注ぐ。教室の窓越しに、それを見つめていた僕は、一瞬、どう答えればいいかわからなくて、少しだけ、会話に間が開いてしまう。

「……そっか」

良かったな、と、続けるべきだ、って、わかってはいた。
わかっていたけれど、その言葉が、僕の唇からこぼれることはなくて。

窓の外、雨に濡れる、色づき始めた木々の葉を眺めて、僕が絞り出せたのはたった、その一言で。

「……うん」

ガラスに映る、彼女の黒髪が、さらりと揺れて。
僕を見ているらしい、その、目が、どこか、悲しそうに揺らいで見えたのは、きっと。

僕の、願望がそう感じさせたに違いない。


僕と彼女は、特に親しい、というわけじゃない。

クラスで、出席番号が近いだけの。
そのせいで、セットで扱われたり日直が一緒になることが多いだけの。

ただの、クラスメイトで。

特に、異性のクラスメイトなんて、特に何かなければ、交流なんてそんなにないのだから、彼女と、僕が何らかの関係にある、という、わけでもない。

でも。

僕は、彼女が、好きだった。

いつから? と言われると、困る。

けれど、その、まっすぐに伸びた黒髪が、染めたことがないであろう、クラスの他の男連中からは野暮ったいと言われているその黒髪が、あまりにさらりと揺れるから、気がつけば、僕は、それを目でおうようになっていた。

確かに、彼女はいわゆるかわいい系といわれる、一般的なカワイイの基準からは、外れているかもしれない。
でも、静かな性格も、そっと笑うような笑顔も、僕にとってはカワイイとしか思えない存在で、けれど、特に深い接点を持たない僕は、それを作ることすら出来ずに、ただのクラスメイトとして、彼女をずっと、目で追い続けてきた。

会話するのは、日直の時や、出席番号順でまとめられて班を作るような授業のときだけ。

ただの、クラスメイト。そのはずだった、僕に、彼女がぽつり、と、打ち明け話をしはじめたのは、どのくらい前のことだろう。

放課後、割りとあっさりみんな教室をあとにするクラスで、日直の仕事をしながら、日誌を書きながら、ぼんやりと、外の景色を眺めていたときだった。

特に会話することなく、必要最低限の会話だけで、いつも終わるそれは、その日も同じように終わるはずだったのに。

彼女は、ぽつり、と、僕に打ち明けたのは、あるクラスメイトへ向ける、恋心だった。

うん、と、僕はただ頷いて。そして、そっか、と、答えた。

そう、あの日も。今日と同じように。

頑張れとも、応援するとも、何も言わずに。

彼女も、ただ、同じように、うん、と応えて。

ただ、それだけの会話、だった。


だから、それきり、終わる話だと、僕は思っていた。

小さな、おそらく初恋に近い、僕の恋が、儚くもちった、それだけの話しだ、と。

けれど、それからも、彼女はぽつり、ぽつり、と、日直のたびに、打ち明けるように言葉をこぼすようになった。

どこであった、てがふれた。わらってくれた。

ささやかな報告のようなそれに、僕はただ、そっか、と、返して、彼女も、うん、と、返す。


それだけの会話で、それ以上ではなくて。
僕は、彼女と会話できる状況を喜べばいいのか、彼女と会話するたびに微かに痛む、まだ想いの残る僕の心を嘆けばいいのか、いつも、悩むしかなかった。


秋の雨は、しとしと、降り続く。

一雨ごとに、きっと寒くなるのだろうな、と、窓の外を見つめていれば、ぱたり、と、日誌を閉じる音がした。

終わったらしい彼女に視線を向ける。
彼女は俯いたまま、僕の好きな黒髪が、微かに下がってその表情を隠していた。

彼女のことが、好きだった。

そして、きっと、その思いは、これからもずっと、ほのかな痛みを伴って、僕の心に残り続けるんだろう。

閉じられた日誌を、そっと引き抜いて席を立つ。

さらり、と、黒髪が揺れて、彼女が顔をあげる。

「これ、出しとくから」

「え、私がいくよ」

「や、書いてくれたし。出してくる」

そのまま、カバンを手に、教室の出口まで進む。

戸惑う彼女の気配を感じて、そこで、足を止めて。

「なあ。――よかった、な」

息をのむ気配を感じて、僕は、小さく笑う。

振り返らない。だから、彼女がどんな表情をしているかなんて、僕は、知らない。

そのまま教室をあとにした僕の背中に、小さなつぶやきが聞こえる。


「ありがとう」


彼女にとって、僕はどんな存在だったのか、なんて、僕にはわからない。
彼女が、僕に何を思い、何を求め、言葉を告げていたのか、なんて、わからない。

けれど。

もし、あの彼女の想いの相手が、僕だったなら、と。

なんど切なく、思ったかしれない。

それでも。

彼女が、笑顔でいられるのなら。
幸せ、ならば。

それで、いいんじゃないか、なんて、かっこつけて考えて、みたりして。

「あーあ」

ぐしゃ、と髪をかき乱して、僕はため息を漏らす。

失恋だと、とうの昔に、わかってはいたけれど。

まだ、しばらくは、立ち直れそうにないな、と、わずかに唇を歪めて、小さく、笑ったのだった。

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