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[掌編]それでも私はほほ笑みを浮かべる。

2013.04.28 Sun [Edit]

Cat and rain
Cat and rain / Ol.G



良い人だ、と、言われる。
偽善者だ、と、言われる。

どちらにしても、私は私にすぎないのに、まるで両極端なうわさ話を、面白いと思う。
こんなふうに言われてたよ、と、私に教えてくれる彼女も、いつも笑っている。
そこに含まれる感情が、どんなものなのか、私は知らないけれど、それでも。

そう。

それでも私は、ほほえみを浮かべる。
穏やかに、ただ、静かに。




いつの頃からか、私はいつも、ほほ笑みを浮かべているようになった。
小さい頃は、それでも、泣いたり怒ったり、喚いたり、癇癪を起こしたり、と、それなりに、子供らしく感情を発露させていたように思う。

しかし、いつの頃からか、そういった激しい感情表現が、何事にもいい効果を及ぼすとは限らない、と、子どもながらに、そこまで明確な意識ではなかったものの、考えたのか、ニコニコと笑顔を浮かべるようになった。

小さい子供が笑っている姿は、得てして、余程の相手でない限り、ほだされやすい。
ニコニコと笑っていると、何やら物事が通りやすいぞ、と、幼い頃の私が思ったのかなんなのか、それから、私はずっと笑顔を、長じるに従ってほほ笑みを、浮かべるようになっていった。

おそらく。

小さな子供の頃は、そこまで打算的に物事を考えていたわけじゃないと思う。
なんとなく、こっちのほうが優しくしてもらえるぞ、といった感覚だけだったのではないだろうか。

そのまま、程々の環境でそれなりに友達に恵まれ、目立たないながらもクラスの中の穏やかな人という立ち位置のまま、私は大学を出、就職をし、そして、結婚をした。

子どもは未だだけれども、夫婦二人でそれなりに幸せに暮らしつつ、ご近所の方とも仲良くさせていただく毎日。

そこでも私は、いつもほほ笑みを絶やさない。

たとえ、それが理不尽な言いがかりでも、相手がこちらを無視するような行動に出たとしても、ただ、私は微笑んだままに、挨拶をするだけである。

その私を毛嫌いしているらしい相手は、どうやら夫の会社の元同僚らしく、元々夫に言い寄っていたけれど相手にされていなかった、とか、その後あてつけのように同じ会社の別の相手と結婚した、とか、何やらうわさ話は、率先してきこうとしなくとも、私と相手との間に何かがあると嗅ぎつけた奥様がたから、あれこれと吹き込まれる。
だからといって憤慨もなにもしない私は、奥様方にしてみれば少々物足りない相手ではあるようだけれど、相変わらずの穏やかな笑顔で、面白みはないけれど良い人、という立ち位置を、ご近所から頂いている。

そう、会社の社宅である集合住宅なのだから、うわさ話はすぐに回るのだ、と、件の相手も気づけばいいものを、どうにも気づかないようで、逆に心配になってしまう。

良い人ね、といってくださる奥様方と、偽善者、と、無視するのをやめたのか、通りすがりに吐き捨てていった相手と。

偽善でもなんでも、穏やかに平穏に暮らせる方が一番じゃないかしら、と、思いながら、私はただ、微笑み続ける。

穏やかで平穏な、私の生活を、守るために。


そう、守りたいのは、私の生活なのだ。

だから、そう、なにがあろうと、私はほほ笑みを浮かべる。

目の前で、どこか得意げな顔で笑みを浮かべ、こちらを見やる件の相手も。

真っ青に青ざめて、私の前で土下座をする、私の夫も。

その隣で、苦しげにうつむく、件の相手の夫も。

彼らがそうしたいのならば、彼らの望むようにすればいい。

私は、私の生活が穏やかであれば、それでいいのだ。

だから、私はそう、ほほ笑みを浮かべる。

別れましょう。幸い、子どももいない。だから、慰謝料の請求だけですみますもの。

穏やかに微笑んで、そう告げる私に、嬉しそうな件の相手と、すがりつきそうな顔で引き止めの言葉を口にする夫。

あら、と、嬉しそうな相手に視線を向け、その穏やかな笑みのままで、私は言葉を続ける。

もちろん、貴方にも請求いたしますから。

途端に、顔を歪めて何事かを罵るように大声で私にぶつける彼女に、詳しくはまた後日、とだけ、告げて。

なんとなく、違和感を感じた頃から用意していた旅行かばん1つ分の荷物をもって、家をあとにする。

追いすがる夫と、それを罵り引き止める件の相手と、うつむき嗚咽を漏らすその相手の夫という、混沌とした状況を放置して。


ああ。

幸せだったし、もっと幸せになれるとおもってた。
愛していたし、愛されていると、感じていたのに。

どこで歯車が狂ったのだろう。

そう思いながらも、浮かぶのは薄い微笑み。
私の顔から、きっと、ほほ笑みが消える日はこないのかもしれない。

とりあえず宿をとったホテルで、弁護士さんと実家に連絡を入れ、1人でほっと息をつく。

――泣かんとよ。

緩く方言で、そう告げた母の言葉に、涙腺が緩むかと思ったけれど、浮かんだのは微笑みで。

ああ。

窓の外は、いつの間にか雨が降り出していた。

まるで涙の代わりのようだ、と、そう思いながら、私はそっと目をとじる。

唇に、薄く、笑みをはいたままで。


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