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[掌編]残されたひとり。

2013.04.26 Fri [Edit]

Left alone
Left alone / Racchio



「私は、帰りません」

そして、一歩、後ろに下がる。

「なっ、どうして?!」

驚いたような顔で私をみる幼馴染、それに、親友だった子、それから、先輩。
どの顔も、信じられない、と、言わんばかりの色に、それぞれ、怒りと、悲しさと、驚きと、微かな歓喜を浮かべて、こちらを見ていた。

だから、私は微笑む。

最高の笑顔を覚えていて欲しいから。

「さようなら、みんな」

どうか、両親に、家族に、伝えてください。
私は幸せなのだ、と。

「まて、一緒に――!」

悲痛に叫ぶ、幼馴染の声と、飛び出そうとするその幼馴染を引き止める、親友だった彼女の姿と、どこか悲しげに、諦めの色とともに笑顔を浮かべる先輩の姿を最後に、彼らの立っている場所の下にあった魔法陣が、強く輝く。

――そして、私は、ひとり、この世界に残ったのだった。




涙があふれる。
これほどまでに、涙というものは出てくるものなのか、と、頭の片隅の冷静な私が、呆れたように考える。

ほろほろと、こぼれては頬を伝う涙で、視界は滲むけれど、私はただ、光の消えた魔法陣を見つめ続けた。

ひとりで、ずっと。

どれくらい時間がたっただろう。
ぎぃ、と、重い音がして、扉が開く。

魔法陣の光が消えたこの場所、神殿の奥の一室なのだけれど、そこは薄暗く、外の方が明るいのか、開いた場所から光が差し込む。
人影が、ひとり、ふたり。そして、次第に人が入ってくるのが気配でわかる。

それでも、私は振り返らない。振り返ることなく、ただ、じっと魔法陣の後を眺めるばかりだった。

帰っていった彼らは知らない。
私が残った理由を、ひとつも知らない。

知らせなかったのは私。
それを選んだのは私。

だけど、わかっていてそう決めたにもかかわらず、涙はとまることなく、静かにこぼれ続けていく。

ざ、と、衣擦れの音。複数の人間がひざまづいたような気配。
それでも振り返らない私のそばへ、白い神官の最高位の衣装を身にまとった男が、そっと寄ってきた。

「――貴方に、心からの感謝を」

静かに告げられた言葉に、男のほうを見やる。
涙で霞む目に、神官にしては美丈夫の男の姿が映る。

「いりません。私は私のためにここに、残ったのですから」

目元を拭い、立ち上がる。
そっと差し出された手を、一瞬ためらってから、取る。

支える手のぬくもりは、間違いなく私達と同じ、人間のもので。

私は、以前、同じように、そう、この世界にはじめて来た日にも手を差し出されたことを思い出す。

あれは、もう、3年近く前になるのか、と、痛む胸とともに懐かしく思いながら。


なにが起こったのか、わからなかった。
私と、幼馴染の彼と、親友と、幼馴染の先輩と、4人で下校していたときのことだった。
何の気なしに会話を繰り返し、どこか微妙に幼馴染に対しての好意の見え隠れする親友の様子に気づきながら、微妙にぎこちなく帰宅していた時のことだった。

突然、現れた光に目をくらまされ、目を再び開いた時には、見知らぬ場所にいた。

それが、神殿で、私達が生きる世界とは全く異なる世界なのだ、と、理解するまでに、4人とも、それぞれに時間がかかった。

その中で、一番時間がかかったのが私だった。
いつまでも、認めようとはせずぐずぐずとしている私に、幼馴染は呆れ、親友は心配しながらもどこかで苦痛そうで、唯一先輩だけが長く付き合ってくれた。

幼馴染と親友は、迷い込んだここで、どうしたら元の世界に戻れるか、と、真剣に考え、そのために努力を重ねていた。

神殿でグズグズしていた私と違い、先輩を含む3人は、あちらこちらへと出かけていたらしい。

神殿は、聖なる間に現れたということで、基本、4人を保護してくれていたけれど、幼馴染と親友は、それを保護ではなく囲い込みだと判断したようだった。

確かに、多少はそのような意味合いも含まれていたけれど、そこまで警戒されるほどの何かを、私達が持っていたとはいいがたい。

それでも、努力した彼らのお陰で、やがて、元の世界に戻れる手段が見つかり、神官を含めて協議された。

そして、みなでかえろう、ということになったのだけれど、その時、ずっと神殿にいた私だけは、事実を知っていた。

私は、私たちは、誰か1人だけでも、この世界に残らなければならないのだ、と。

それは、元の世界とこの世界を繋ぐ人間が、元に世界に戻るまでの間必要である、という技術的な問題と、また、聖なる間に現れる人間が国に存在する限り、この国は災害が少なくなる、という秘された事実の為、だった。

ずっと神殿にこもっていた私は、暇ならばと、手の空いた神官や見習いの方から、様々なことを教わった。

そして、その中で、様々なことにそれなりの一定以上の理解を見せた私だったからか、そんな事実を教えてくれたのだ。

そうそれは、きっと、話を聞けば私が残るだろうという打算も多少あったのだろう。

そして、私は、ここに残ることを決めた。

この、最高位の神官の、指し示す道のとおりに。

差し出された手をとり、促されるままに聖なる間をあとにする。

静かな廊下へ響く、足音の合間、隣の男へ、そっと呟く。

「これで、満足ですか」

男は、なにも言わぬまま、ゆるりと微笑む。

そのまま、無言で歩く中、私は、ただ、帰っていったみなを思うのだった。

3年は長い。幼馴染とともに立ち向かう中で、親友は完全に、彼に恋をした。幼馴染は私のことを情けないといいながらも、気にかけていてくれたのだけれど、グズグズとしている私が彼に来にかけられている事自体が親友には許せなかったのか、次第に態度に見え隠れするようになった。

先輩は、親友が好きだったけれど、幼馴染と親しくなっていく様子に、諦めをにじませるようになっていた。

あの、最後のとき。
唖然と、驚きながらも怒りをにじませて止めようとした幼馴染と。悲しそうな表情の奥に、僅かに歓喜をにじませた、親友と。そして、そんな二人をみつめ、またひとり残る私をみつめて諦めをにじませた先輩の様子を思い返す。

そっと、息を漏らし、そして、呟く。

「それでも。幸せであればいい」

「きっと、幸せであるだろう」

1人つぶやいた声に帰った言葉に、はじかれるように顔を上げれば、静かに微笑む男の顔。

この国の、最高位の神官にして、継承権を破棄した第二皇子。

その立場を知るまで、私のそばでいろんなことを教えてくれる彼に、どれほど助けられたことかわからない。

けれど、その立場を知ってしまえば、そんな思いもこれから抱くことは難しいだろう。

そっとうつむき、足を進める。

これから、神殿の奥が私の、唯一の場所にてすみかになる。

これでよかったのだ、と、どこか痛む胸に気づかないふりをして、そう、胸のうちにつぶやいた。


「これで、俺のものだ」

そんな男のつぶやきなどには、なにも、気づかぬままに。

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