RSS|archives|admin
HOME  ◇ IT ◇ LIFE ◇ 雑記 ◇ 創作関連 ◇ 掌編小説 ◇ 小説目次 ◇ Twitterログ

スポンサーサイト

--.--.-- -- [Edit]
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

web拍手 by FC2 ブログランキング・にほんブログ村へ このエントリーをはてなブックマークに追加 





スポンサードリンク

Category:スポンサー広告 | Comment(-) | Trackback(-) | top↑ |

[掌編]例えばこんな恋愛譚

2013.04.15 Mon [Edit]

cats have emotions too
cats have emotions too / laihiu



泣き声が聞こえた気がして、足を止めた。
既に夜も遅いこの時刻、家路に向かう道は街灯が付いているとはいえ、あまりのんびりと歩きたい雰囲気ではない。
仕事が残業になってしまったのが悪いのだ、と、駅から早足で、急いで帰宅する途中、通りかかった公園の中から、泣き声が聞こえた気がした。

気のせいだ、と、通り過ぎればよかったのかもしれない。
いつもならば、きっと、気のせいだと、通りすぎていたに違いないのだ。

なのになぜか、その日は、足を止めてしまった。

それがきっと、すべてのはじまりの鍵だったのだ。


夜の公園は、不思議な雰囲気を持っていると想う。
どこか不気味で、けれどどこか神秘的だ、と、そっと覗くように公園の中に歩を進めながら、想う。
学校近くにあるこの公園は、遊具が奥の方にまとまっていくつかあるだけで、割りと狭い。
視線をそっと彷徨わせれば、そう時間をかけることなく、泣き声の主を、見つけることがでいた。

その人は、ブランコに乗っていた。
ぎいぎい、と、ブランコを漕ぎながら、ずず、と、小さく泣き声が聞こえる。

その様子をみて、私は呆然と、口を開く。

そりゃそうだろう。
夜の公園で、スーツ姿のサラリーマンが、ブランコを漕ぎながら泣いている、なんて。
まるで出来の悪い三題噺のようだ、と、思いつつ、そっとその人物を伺う。

涙をながすその人は、中肉中背、特に目を引く容姿では内容だった。

けれど、どこか見覚えがある気がして、じっと目を凝らす。

「あっ」

思い当たって、思わず口から声が漏れる。

瞬間、ばちり、と、視線があってしまったのは、失敗だったかもしれない。

彼は、中学時代の同級生だった。
中学・高校と地元で、大学はよそに出た私は、就職を期に故郷へと戻った。
高校時代の友人たちとは、割りと頻繁に連絡をとるのだけれど、中学時代のメンバーは、あまり地元に残ってなくて、だから、誰がどうしてるという情報はあまりはいってこない。
顔を覚えていたのは、3年間同じクラスだったから。
確か、結構話をしていたような気もするけれど、それでも、男子と女子であるからして、それ以降連絡を取ることはなかった。

「へんなとこ、みられたな」

ずず、と、鼻をすすりながら、ブランコから降りた彼が告げる。

「ん、みるつもりなかったんだけど。悪い」

そう返して、近くの自販機で買ってきた缶コーヒーを、ひとつ投げる。
はるとはいえ、夜は結構冷えるから、暖かい飲み物は嬉しい。

ベンチに腰掛けて、どちらからともなく沈黙が落ちる。
正直、どうしたものかと、早く帰りたいな、と、思っていると、また隣から泣き声が聞こえる。

ぎょっとして振り返れば、だばだばと涙をこぼす彼の姿があって、狼狽える。

一体、どうしたのさ。

おそらく、口からそうこぼれ出ていたのだろう。
彼は、泣きながら、その言葉に対する答えをくれた。

奥さんが浮気して、子どもをおいて離婚したのだそうだ。
再構築したいと、申し出たけれど子どもいらないとおいていってしまったのだとか。

まだ愛してるんだ、と、ぼろぼろ泣く彼は、どうやら疲れているようだった。
子どもは? と問いかけると、小学生で、この公園の前のアパートに住んでいるらしいのだが、夜寝かしつけてからそっと、抜け出してきたのだという。

子どもを1人にするなんて、と、思いもしたけれど、彼の話を聞くうちになにも言えなくなる。
朝、食事を作り食べさせて学校に送り出し、仕事を終えて帰宅、ごはんを作り食べさせて……という日々。
ちょうど、仕事で大きなプロジェクトにかかることになり、あれこれと手を回して頑張っていたけれど、さすがにいろんな心労も重なって、がっくりときてしまったらしい。
大変だねぇ、と、呟けば、彼がまた泣き出す。

男が泣くなよ、と、想うけれど、それでも、ここまで泣くほど疲弊してたんだなぁ、と、それは口に出さずに飲み込んだ。

こうして、私と彼は再会したわけだけれど。

数日後、休日に心配になって彼のアパートに様子を見に行けば、彼はせっかくの休日だというのに熱でぐったりだという。
ふらふらしながら子どもの世話をする彼の様子に、おせっかい虫が顔をだして、彼に横になるようにいっておいて、子どもの食事の世話や家事を済ませたのは、良かったのか悪かったのか。
その後、彼から頭を下げられて、お手伝いにぼちぼちと行くようになったのだけれど。

その時も、まだ、別に、私と彼は付き合ってたわけではない。
ついでに、恋していたわけでもない。

それに変化が訪れたのは、彼の子どもの一言だったのかもしれない。

かぞくなのに、どうしてかえるの?

その後、なんとなく付き合い始めて、そして、結婚することになったのだから、人生とは不思議なものだと想う。


今でも想う。あの時、泣き声に気づかなかったら、もしくは、気づいても無視して通りすぎてしまっていたら。

きっと、私と彼の再会は、あったとしてももっと遅くなってからで、ついでに、今のような関係になっていたとは思えない。

幸せだな、と、想う。
そういう意味では、あの時の選択が間違ってなかった、と思える。

あのとき、足を止めなかったら。

幸せそうに笑いながら、私を呼ぶ彼と子どもに手を振り返す。

あの日足を止めた自分の選択は、間違っていなかったのだ、と、思いながら。

web拍手 by FC2 ブログランキング・にほんブログ村へ このエントリーをはてなブックマークに追加 





スポンサードリンク

Theme:自作小説 | Genre:小説・文学 |
Category:掌編小説 | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |
<<[雑想]ただ文章を読みたいのです | HOME | [メモ]忘れっぽい私の物忘れ防止作戦メモ>>
name
title
mail
url

[     ]
Trackback URL
http://angelgardens.blog47.fc2.com/tb.php/1023-7c61edf3


Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。