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[掌編]窓の外を眺める君に

2013.04.04 Thu [Edit]

Cat Window Snow Fall February 23, 2013 1
Cat Window Snow Fall February 23, 2013 1 / stevendepolo



教室の一番後ろの窓際の席は、僕にとってこの上なく最高の席だ。
先生からも目立たず、教室のほとんどの生徒の背中を眺めることが出来る。

授業中、僕は、先生の話を聞き流しながら、ぼんやりと教室を見回す。
寝ている奴、内職してる奴、何か食べてる奴、隠れて携帯いじってる奴、いろんなことしてる。

結構いい加減だなぁ、みんな、と、自分を棚上げして思ってみる。

まあ。進学校ってほどでもない、そこそこな高校の、二年にあがる寸前、一年の終わりなんて、こんなものなのかもしれない。






さて。
僕には1人、気になる人がいる。
気になる人、というと、まるで僕がその人に恋してるようだけれども、少し違う。
恋してるのかも、しれないけれど、それは後付けで、気になったのが最初。
いや、気になった段階で既に恋に落ちていたのだろうか。そんな細かいことはどうでもいいのだけれど。

僕の席の一つ前に、彼女はいる。
髪を校則通りに2つに分けて結んでいる、髪は黒いけれど光に透けると少し茶色に見える、けど染めてるわけではない、ごく普通の女の子だ。
これを言うと、怒られそうだけれど、同じような髪型をしてる女子を、僕は見分けるのが苦手だったりする。
制服を着ていておさげにしてる、という生徒は、割りと校則が厳しいうちの高校には結構たくさんいて、みんな背格好が似通ってるせいか、僕は未だに、見分けがつかなかったりする。

そんな中で、はっきり見分けがつくのが、彼女だった。

けれど、彼女についても最初から見分けがついたわけではない。
前の席になり、その彼女の行動に気がついてから、次第に見分けがつくようになっていった、という感じだろうか。
どれだけ眺めてたんだ、と、ちょっと変態くさい、と、いわれるかもしれないが、髪の質感で背後からでも見分けがつくようになってしまったんだから、ちょっと僕はいろいろ自重すべきだと思う。

さて、そんな彼女が毎時間、特に昼ごはん前と昼ごはんのあとによく取る行動が、ひとつある。
これは、彼女の前の席の連中もやってることかもしれないが、特に彼女は頻繁だった。

彼女は、授業を真面目に受けている。基本的に、ではあるが。
だが、突然、ふい、と、ごく自然に、当たり前のように窓の外に視線を向け、じっと窓の外を眺め続けるのだ。

何をみてるのか、と、目を凝らしたこともあったけれど、僕は、その何かを見分けることができなかった。

彼女は、授業中に、ごく自然に、まるでそれが当たり前の行動であるかのように窓の外に視線を向け、眺め続ける。

先生に気づかれないのは、なぜなのか、未だに不思議でならない。


彼女が僕の席の前になったのは、三学期がスタートしてすぐのことだった。
最初のうちは、教室のあちこちを眺めるのに僕は忙しかったから、気づかなかった。

けれど、1週間、10日と、1ヶ月とたつうちに、彼女の窓の外をみる頻度の高さに気づく。

そんなので授業大丈夫なのかな、と、思うけれど、彼女の成績は悪くない。むしろいいほうだったりする。
授業を聞き流しているように見えるのに、なんでだろうと思うけれど、まさかそれを聞く勇気もなく。

僕はただ、窓の外を眺める君を、気づいて以来、ずっと観察し続けてきた。

最初は、うん、ただの興味、好奇心だった。

だけど、そう、毎日そうして眺めるうちに、その視線の先にあるものが知りたくなり、そして、僕がその視線の先にいればいいのに、と、思うようになっていった。

後ろからだから、顔がはっきり見えるわけじゃない。けれど、窓ガラスというのは、意外とものを映し出す。
ガラスに映る彼女の表情が、柔らかく幸せそうで、その目がゆるりとほどけているのを見た時、僕はきっと、恋に落ちたのだろう。

そう、認めよう、僕は彼女が好きなのだと。
実は、プリントの受け私などで「はい」「ああ、うん」程度の会話しかないというのに、僕ときたら、これほどに惚れっぽかっただろうか。
気になる、だなんて言葉でごまかしてきたけれど、どうやら僕は、彼女が好きらしい。

そう気づいたのは、修了式を間近に控えた、そんな時期だった。


来年になれば、クラスが変わる。理系の僕と、文系の彼女は確実にクラスが別になる。
それはしかたがないことだけれど、このまま何もなく、というのも少し寂しい。

でも、さすがにまだ、告白する勇気はなくて、僕は、悩んで手紙を書いた。

書き出しも、悩んで悩んで、やっと書き上げた。


窓の外を眺める君に

それから始まる文章は、ちょっと青くさくて、なんだかきざったらしくて、読み返すと恥ずかしかったけれど、勢いでそっと、彼女の机の中に忍ばせた。

彼女がその手紙に気づくのは、きっと、修了式の日だろう。

気づいた彼女が、どんな反応を示すだろうか、と、僕は、緊張でドキドキする鼓動とは別に、どこかいたずらを仕掛けた子どものように、楽しみで仕方がなかったのだった。



窓の外を眺める君に

君が眺めているものは、なんですか?

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