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[掌編]夢の約束

2013.04.02 Tue [Edit]

I have a dream
I have a dream / Marco Zanferrari



夢をみるなら、優しい夢がいい。
暖かい空気の中で、とろとろとまどろむような、穏やかで優しい夢がいい。
そうすればきっと、目覚めは爽やかで一日元気で過ごせるに違いないのだから。

現実は厳しい、と、いうほど、厳しい生活をしているわけじゃない。けれど、微妙に疲れやらどんよりした気持ちやら、色んな物が積み重なって、ついついため息がこぼれがちな日常も、いい夢をみることができれば、きっと、乗りきれるような気がしていた。

現実逃避、それでいいと思う。だって、誰にも迷惑にならないこの方法なら、なにも害もないのだから。





夢をみるなら、優しい夢がいい。
だから、悪夢をみるのは嫌い。
怖い夢も、スリリングな夢も、要らない。

むしろ、夢の中で昼寝をしているような、そんな夢がいい。

せめて夢の中だけでも、穏やかで平穏に過ごしたい、と、そう思ってた。
現実は、働いている以上人と関わらざるを得ないから、多少の摩擦は避けられない。
それでもなんとか穏やかに乗り切ってはいるけれど、だからこそ、夢は穏やかであれ、と、ずっと思っていた。

なのに。

どうして、こう、私ときたら。

夢のなかで、私は、泣いていた。
理由は、目の前の情景にあるだろう。
ひとりの男性と、1人の女性が、手をつなぎ幸せそうに笑っている。
ただそれだけなのに、私はただ、ぼろぼろと涙をこぼしていた。

うん、知ってる。
あの男性は、職場の上司で、あの女性は、職場の後輩だ。
彼らは、別に現実で付き合ってるわけじゃない、けど、仲がいい。
だから、この光景は、夢である、と、わかってるはずなのに、もしかしたらこれが本当かもしれないという思いも消せなくて、涙がただ溢れる。

悲しい、切ない、辛い、と、ほろほろと涙をこぼしながらも、夢の中の私は、思ってる。

ああ、これは夢だわ、と。
こんな夢をみるなんて、最低だわ、と。


目覚めて私は、頭を抱える。
だって、あんな夢をみるなんて。
夢は優しい夢がいいのに、と思いながら、それでも、あんな夢をみた理由に思い当たって、顔が赤くなるのをごまかしながら頭を抱えて唸る。

そうか、私は、完全に上司の彼に恋をしてしまっていたのか。
あんな夢をみて、悲しいと思い涙するくらいには、どっぷりとはまりこんでいたのか。

信じられない思いと、なるほどと納得する想いの中で、私はため息を付く。

ああ、もう。
現実では、ただの上司と部下でしかなくて、飲みに行くのも職場の慰安での団体だけで、その時も話をすることなどあまりないというのに。
なんだって、私はあの人に惚れ込んだのだろう。

確かに、仕事はできるし、見栄えも悪くはない。
人柄も少しぶっきらぼうな部分もあるけれど、出世するだけあって人当たりも悪くはない。

でもそこまで、あそこまで惚れ込むほど、彼のことを知ってるわけじゃないのに。
夢の中で、あんなに涙をながすほど、他の女性と笑いあう姿を見てあれほど悲しくなるほど、彼のことを知りはしないというのに。

一体、どうしたことよ、と、1人頭を抱えたその日は、やはり微妙に不調を引きずってしまった。

ああ、だから、みるならばやさしい夢がいいのに。


夢は続く。
後輩と上司の様子だったり、上司から冷たい言葉をかけられる夢だったり。
その合間に、混じったようにちらほらと、熱い視線と言葉を向けられる幸せな夢が交じる。

ゆらりゆらりと、振り子のように、幸せと悪夢とをみせられて、夢を見るのもイヤになってきはじめたそのころ。

夢の中の彼がいう。

俺を信じろ、と。

また、別の彼がいう。

騙されてんだよ馬鹿が、と。

ゆらりゆらりと、ゆれる振り子の中で、私は、信じろという言葉に頷いた。

だって夢は、優しい方がいい。
優しい夢のほうが、いいもの。


しばらくして。
後輩は、同じ職場の同僚と結婚する、と、退職していった。
どうやら、上司と後輩は、現実ではなんの関係もなかったらしい。
ほっとする反面、いやもともと、そんな何か関係がありそうなほどの雰囲気でもなかったわよね、と、1人首をひねる。

そんな私を上司がみていた、なんて、私は知らない。

それから、上司が、なぜかお昼に飲みにと、ともに行こうと誘うようになるなんて、全く予測なんかしていなかった。

夢をみるならやさしい夢がいい。
約束するなら、優しい約束がいい。

抱きしめられた腕の中、そっとつぶやいた私に、彼が小さく笑う。

だから、約束しただろ、と。


夢と現実の狭間の、ゆるやかな春の夜のまぼろし。

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