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[掌編]物語のひとかけら

2013.03.24 Sun [Edit]

Cat Queen
Cat Queen / Jsome1



「貴方なんて、ふさわしくないわ! とっとと出て行きなさい!」

くっ、と顔を上げ、ドレスに包まれた胸をはって女が私にそう宣言する。
さらりと流れる金色の髪は、確かに美しい。緑の目も、その顔の作りも肢体も、美しいものだろうと思う。
この国の侯爵令嬢として生まれ、王の後宮に入り、筆頭として君臨してきた彼女。
その周囲には、同じように様々な色合いのドレスの女性たちが、あざけるような顔をしてこちらを見ている。

はらり、と、扇を開いて、その影でわざとらしくため息を漏らす。

なんとまあ、面白くもなんともない展開なのでしょう。
母上様、国の後宮の方が、もっとスリルがありましたわ。


「なにがおかしいの!」

私が笑ったことが気に食わなかったのか、かの侯爵令嬢が苛立ったように告げる。
その顔を、一度自分でご覧になればいいのに。

「ええ、すべてがおかしくて、しかたがないのですわ」

はんなりと笑って、見返してやれば、顔を赤くし、私に対して罵倒ともいえる言葉を告げてくるご令嬢たち。

いいえ、後宮の、王の影の花達。そして、私もその一輪。
ただ、私と彼女たちの間で、違うといえるのは――。


「控えなさい」

短く告げた言葉に、反論しようとした彼女たちの口が、ぴたりと閉ざされる。

それはそうだろう、私の周りを守るかのように、彼女たちに剣を向ける騎士たちの姿が、そこにあるのだから。

「な、な、なぜ……っ」

唖然としたようにそうつぶやいて、そしてどうして、と、青ざめながら言い募る彼女たちに、小さく笑う。

どうしてこう、愚かなのでしょう。
地位は地位、当たり前のことなのに。
序列のない現状の後宮での地位と、それは別のものなのに。

「――何事だ」

低く深い声が、聞こえる。
今頃お出まし? と思いながらも、私は振り返り、そして礼を取る。
この国の王に。この後宮の主に。

「へ、へいかっ。いえ、そのっ」

言い募る令嬢にちらりと一度視線を向けて、それから私の傍らに寄ってくる王に、ゆっくりとそのまま告げる。

「お騒がせいたしましたこと、誠に申し訳ございません」

「いや、大丈夫だろうか。姫に何かあっては、困るからな」

そう告げて、差し出して来られた手を、そっと取る。

顔を上げれば、穏やかに微笑む笑顔があって、私もつられるままに微笑み返す。

そして、王は振り返り、先程から青ざめたままの令嬢たちに、低く告げる。

「帝国の第一皇女に対して、礼も取れぬのか、お前たちは」

そう。私は、この国に隣接する国の、第一皇女。
大国同士であるこの国とは、互いに対等ではあるものの、それゆえにお互い、尊重しあう国の、第一皇女。
私は、この国に王妃となるために嫁いできた。
そして、王もそれを受け入れ、彼なりに愛してくれている。

そう。たとえ他に愛する女性がいようとも、後宮に多少のお渡りがあろうとも、彼は理解している。
私が、帝国の第一皇女であり、王族であることを。
そして、パートナーとして、私を認め、また違う意味で愛してくれているのだ。

彼女たちはそれを知らない。
ただ、身分が高い女があとから現れたとしか、知らない。
筆頭だったのは過去の話。それを理解せずに、王の寵愛する女へ攻撃をしながら、新参者である私をけん制する。

それも、どうしようもなく、策略もなにもない手段で。

青ざめた彼女たちに、きっと、未来はないだろう。
実家ごと、纏めてきっと、葬り去れるだろう。
穏やかに笑う王の目が、きらりと獲物を狙う獣のように光る。

王は、優しい。穏やかに後宮の妃の間を、公平に回る。
唯一、寵愛する方のところに多少比重は回るものの、勢力を均等にするために、彼は公平に回る。
王は優しい。そう、やさしくみえる。
だから、後宮の姫たちは、勘違いをする。

なにをしても許される、と。

侮るとこれほど恐ろしい人はいないというのに。

小さく微笑んで、近衛に引き立てられていく彼女たちの姿を眺める。

これで、後宮も少しは静かになるだろう。

私はしばらく後に、王宮に居を移す。
私に求められるのは、彼のパートナーとしての政務。
ここは、王を癒すための場所。

問題児たちは、姿を消した。

あとは、王の寵愛を受ける彼の方を中心に、穏やかに営まれるだろう。

「迷惑をかけてしまったか?」

穏やかにそう尋ねる王に、私は笑みを返す。

「いいえ? 故郷に比べれば、大したことはございませんわ」

くっと、笑った王は、そうか、と短い返事を返してきた。

そう。
帝国の後宮は、こんなものじゃない。
義理の親姉妹入り乱れての、謀略合戦、だ。
その中を生き抜いてきた私に、この程度、何のことはない。


「素晴らしい妃を得て、幸運だな」

そう告げる王に、私は鮮やかに笑う。

「光栄ですわ、陛下」


いまではないとき、ここではない場所で。
紡がれた物語の、そのひとかけらのお話。

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